第133話 異変は忍び寄る



結婚式の翌日には、私とオズワルド様は街に出ていた。

アレク様の結婚式ムードは変わらず、お店には結婚式にちなんだものが並べられていた。


貴族街で露店は無いが、貴族街以外では結婚式のお祝いのお菓子だなんだと土産物が並び、売れ行きは順調らしい。

さすが非の打ち所のないフェリシア様は国民にも愛されている。


「オズワルド様、いっぱい買い物しましょうね。お父様の邸の皆にもワインやお菓子を買ってあげなくちゃ。カレン様にも絵画集を頼まれましたから、しっかり選びますよ」


せっかくのお祝いですからね。

この後は、お父様の邸にもオズワルド様と訪問するから、使用人達にもお土産を買ってあげたい。


それに、ブラッドフォードの図書館にいるカレン様に絵画集を頼まれている。

カレン様は、地下から……というか、あの大きな水晶からは離れられないから、暇潰しに絵画集を買って来い、と頼まれたのだ。


刻の精霊のことを聞きに言ったら、そんな話になり、しかも刻の精霊の場所はカレン様に聞いてもわからなかった。


一度きちんとお礼を言いたかったのだが、カレン様に聞けば居場所なんか知らん。と言われてしまった。

オズワルド様は刻の精霊は私を気に入っているんじゃないか……と言っており、私の側にいる気がする、と言っていた。

でお、残念だが、居場所がわからないからどうしようもない。



そして、オズワルド様と街を歩くなんてデートですよね!

いつもはブラッドフォード邸に籠っているから、たまのデートに気分が弾んでしまう。


この日の為に、読みたい本を三冊読み上げましたから、続きが気になることなく楽しめますよ。


「昨日のオズワルド様の魔法の花火も素敵でしたよ」

「それは良かった…何でも買ってやるから好きなものを選べ」

「任せて下さい。今日は買いますよ」


本当にオズワルド様は格好良かった。

実際、バルコニーへの歓声にはオズワルド様が素敵で、手を振っていた女性も少からずいただろう。


それくらいオズワルド様は人気者だ。


今も通りすがりの女性達はオズワルド様に振り向いている。

私が隣で腕を組んでなかったら、きっと歩くごとに声をかけられただろう。


そんな楽しい気持ちで貴族街の店の街路樹を歩いていると、急に耳のピアスにビリッと稲妻が走るように刺激が走った。


「キャア!?」

「リディア!?」


オズワルド様はすかさず私をマントで包み抱き寄せたが、周りに不審な人も出来事もない。

私達の周りを通り行く人々が、不思議がって私達を見ているくらいだ。


マントの隙間から顔を少しだし、オズワルド様を見上げると、厳しい顔で辺りを警戒するように周りを見ていた。


「オズワルド様…耳が急に…」

「リディア、買い物は中止だ。すぐに城に帰るぞ」

「はい」


オズワルド様は踵を返し、足早に私の肩を掴んだまま城へと急いで帰った。




結婚式の為に私達はブラッドフォード公爵家として、城に部屋を用意してもらっており、私とオズワルド様は真っ直ぐにその部屋に帰った。


「リディア、部屋から出ていくなよ」

「はい、オズワルド様はどこかにいかれるのですか?」

「ヒースの所に行って来る」


オズワルド様は私のピアスの耳たぶを撫でるように触れながら、そう言った。


「…さっきのはなんだったんですか?」

「悪戯レベルだろうが、誰かが何か仕掛けて来たのだと思う」

「…私、もう狙われる理由がありませんよ」


アリシアは刑務所だし、レオン様の事は片付いたはず。


「異変がないかヒースに聞いて来るから、知らないやつを入れるなよ」

「絶対に入れません!」


知らない人なんて怖くて入れられません!


オズワルド様は、いつものように堂々としているけど、私を心配しているのはわかる。


「すぐに帰って来るから晩餐のドレスでも選んでいろ」

「はい」


オズワルド様は心配そうに一度抱擁してから部屋を出ていった。

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