第131話 ヒースの休暇 2


「リディアさんは良い人だな」

「リディアはやらんぞ」

「全くいらんから安心しろ」


久しぶりにヒースと二人になり、いつもの調子で話していた。


「美人の令嬢を呼ぶから、好きに楽しめ。部屋も準備してやるぞ」

「久しぶりの休暇だから、休みたかったのだが……断れないか?」

「招待状はまだ出してないが……いらんのか?」

「実は……兄上が、最近釣書を持ってくるんだ。しばらく令嬢はいらんな。……正直、結婚を急かされるのが嫌で逃げて来た」


ヒースの兄上のヘクター様は歳が離れているし、押しが強いから、かなりの釣書を持って来たのかもしれない。

結局、ヒースの希望で令嬢を呼んでの晩餐は中止することになった。


「オズ、魔法騎士団に戻らないのか? もう、テレンス団長はいないぞ」

「今はリディアがいるからな。金も作らんといけないし……テレンスは辞めたのか?」

「もう5ヶ月位前に辞めている」


テレンスは元魔法騎士団長の一人で、俺と同じ闇魔法使いだ。

闇魔法は珍しく、テレンスは中々闇魔法使いとして腕はあったようで魔法騎士団長にまで登りつめたぐらい真面目な男だったが、俺が18歳の時、魔法騎士になり魔法騎士団に所属した時に闇魔法使いとして俺の方が魔力が強かったせいか、随分嫉妬された。


闇魔法使いは珍しいから、皆から期待され、持ち上げられていたのかもしれない。

そんなテレンスの前に闇魔法で有名なブラッドフォードの俺がやって来て、テレンスは焦ったのだろう。


闇魔法使いとして、テレンスではなく俺が期待されると。


しかも、テレンスは真面目で魔法騎士団長になる為に一心に働いていたせいか、やっと出来た若い婚約者まで俺に一目惚れしたらしく、婚約破棄までされていた。


婚約者のいる女なんか面倒なだけだから、相手にもしなかったのに何を思ったか、婚約破棄すると、俺に相手をされると思い、あっさりとテレンスとの婚約破棄をしたらしい。


大体女に困ってないのに、そんな面倒な女を例え一夜でも相手にするわけがない。


婚約破棄されたテレンスは益々俺を目の敵にし、随分嫌がらせを受けたが、俺が相手にしなかったから益々憤っていた。


そして、魔法騎士の訓練中に魔法の相手として挑んで来たから、受けて立ちそのまま返り討ちにしてやった。


闇魔法で俺に勝てる奴なんていないのに、馬鹿な奴だな、と思ったのを覚えている。


その後、俺は元々長くいるつもりはなかったから魔法騎士団も辞めた。

当主としてブラッドフォードの家も守らないといけなかったし。


「オズがいると楽になるんだかな……」

「時々は手を貸してやっているだろ」


ヒースは昔から真面目だから、ブラッドフォード邸に来ると随分息抜きになるみたいだった。

最近は俺とリディアのことで忙しかったのだろうと、少し苦労をかけたと思った。


「ゆっくり休め」

「そうする」


そして、ヒースはブラッドフォード邸で休暇を堪能していた。





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