第129話 番外編 (オズワルドと子供 後編)
「リディア!子供を拭いてやれ」
バスルームの前で待っていた私は、開けますよ。とバスルームに入ると腰にタオルを巻きオズワルド様もバスタブから出ていた。
水も滴るいい男なのか、濡れた髪に引き締まった体はドキッとするほど色気があった。
「…オズワルド様、早く服を着て下さい!」
「いつも裸は見ているだろうが」
もうヤダ、この人!
オズワルド様から目を逸らし、子供の体を拭いてあげた。
「オズワルド様、子供に変なことを教えないで下さいよ」
「盗み聞きするなよ」
そして、小柄なリンクスのシャツを着せると、子供にはやはりまだタボダボだった。
しかし背の高いオズワルド様の服は絶対着られないだろう。
しかも、入浴する前はぐしゅぐしゅと涙目だったが、オズワルド様の話を真剣に聞いたのか、子供はもう涙目ではなかった。
お腹も空いていたのか、スープにパンもあっという間に平らげた。
「食べたら寝ましょうか?」
「ああ、リンクスを呼べ。部屋ぐらい準備しているだろう」
やはり、そうきたか。
「今夜は子供と寝てください」
「嫌だね。何で俺が」
「…では、私が子供と二人で部屋で寝ます」
「リディアは俺のベッドだ」
「では、子供も一緒に」
オズワルド様はソファーにもたれギラギラと睨むが、引き下がりませんからね!
「オズワルド様が連れて来たのですから、今夜は子供と一緒です!」
「却下」
「子供に変なことを教えたんですから、今夜はオズワルド様が子供と一緒です」
言うんじゃなかったとオズワルド様は頭をかいていた。
変なことを教えたバツですよ。
しぶしぶ子供と三人で寝ることに了承したオズワルド様は自然と真ん中に子供を入れた。
子供はすでにうとうととしており、すぐに眠りについた。
「それにしても、ご両親は?明日に迎えに来るのは祖父母だと」
「父親はとうに他界しているらしい。母親は先日病死したようだな。別の街にいる母方の祖父母が明日来るようだったが、この街から離れたくなくて逃げたらしいぞ。隣人が迎えに来るまで預かっていたんだが、必死で探していた」
「それで森に…」
寝ている子供を撫でると、大人と違い子供特有の温かさがあった。
「子供に優しいな」
「子供は可愛いですよ」
そう言うと、撫でている腕を掴まれた。
「子供が欲しいか?…お前との子ならすぐにでも、もうけていいぞ」
掴まれた腕にオズワルド様は唇を当ててきた。
「…子供は授かりものですから…」
「…欲しくないのか?」
「欲しいですけど…」
欲しいですけど、もう少し二人でいたい。
「ハッキリせんな。どうした?」
「笑いませんか?」
「言ってみろ」
どうしようかと思うも、オズワルド様には言ってみることにした。
「出会ったその日に婚約して、すでに結婚しましたので、何というか…恋人の期間があまりなかったと思いまして…色々ありましたし」
「お前…最初は逃げていたくせに」
「そ、それはそうですけど」
やっぱり呆れられた。
笑いはしなかったけど、脱力しているのか、オズワルド様は枕に顔を埋めていた。
「今度どこかに連れていってやる」
「デートですか?」
「そうだな」
「できたら近場で」
「わかった」
思いもよらない誘いに嬉しくなった。
「でも、オズワルド様の子供は欲しいですよ」
「リディアならいい母親になれる」
そう言いながら、オズワルド様は体を起こしおやすみのキスをしてきた。
そして、子供と三人で並んだまま眠りについた。
翌朝、朝食後には子供の祖父母が迎えにこられ随分頭を下げられた。
びしょびしょだった服もリンクスが夕べのうちに洗濯し、綺麗にされていた。
子供はもう今朝から一度も涙目になってない。
祖父母に引き渡すまで、私とオズワルド様の手をずっと握っていたのだ。
意外とオズワルド様に懐いているようにも見える。
あの入浴が、男同士の裸の付き合いというやつになったのだろうか。
たった一晩だが、見送ると安心したのと同時に少し寂しくなった。
何だか、早く子供が欲しい気持ちが芽生えた気分だった。
「オズワルド様…子供が欲しくなったかもしれません」
「俺はいつ出来ても問題ないぞ」
「そうですか」
そう言うオズワルド様はニヤリと不敵に笑った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます