第114話 治癒をしよう 2

セシルさんの目の前に座ったままのオズワルド様の横に、ライア様が立っていた。


この方は魔法騎士だけど、オズワルド様もヒース様も知り合いみたいだった。

治癒が始まりオズワルド様がセシルさんの顔にそっと手を当てると、その手は優しいんだろうな、と思う。

私の頬を撫でる時もいつも優しいから、セシルさんも優しさを感じてると思う。

これが治癒の為じゃなく他の女に触っていたら、モヤりそうなぐらいオズワルド様が優しく見えた。


しかし、セシルさんはレオン様が好きそうだった。

少し離れた所に立っている私は隣にいるヒース様に内緒話のように小声で話しかけた。


「ヒース様、セシルさんとレオン様はどうなんですか?」

「さぁ、俺は何ともわかりませんが…」

「本当ですか?」

「…レオン様のことに口出すつもりはありませんよ」


良い感じなんですね!?

その口ぶりと雰囲気は良い感じですね!

やっとまともな女性と出逢ったのですね!

もう地雷女は困りますからね!

私とオズワルド様に危険が及ぶお相手は命に関わりますからね!


ふふふ、と軽く笑みが溢れるとオズワルド様の手からセシルさんの顔の薄黒いものがゆっくり引っ張り出されるように出てきた。

オズワルド様がその薄黒いものを握ると潰されるように消えた。


「ライア、治癒魔法をかけろ。もう闇の魔素はないはずだ」

「了解です」


オズワルド様が立ち上がりライア様が交代でセシルさんの前に座ると、水色の光がセシルさんの顔を包むように広がった。


よく見てると段々あの爛れが薄くなっていく。やはり魔法は凄い。

あっという間にセシルさんの顔に痣はなくなった。


「リディア、セシルはもう大丈夫だ」


オズワルド様が私の隣に来てそう言った。


「オズワルド様、素晴らしいです」

「後はリンハルトにどう話をつけるか見ものだな」

「…また、悪巧みですか?」

「まだ手は出さんぞ。しばらくは高見の見物をするか」


どうやら何か考えているらしい。

しかも、高見の見物って…まさかレオン様に解決させようとしてますか?


「レオン様に出来ますかね?」

「知らんな」


私達の会話をよそに、レオン様は本当に嬉しそうな表情でセシルさんの前に膝をつき手を取っている。

本当に治したかったのだろうと誰が見てもそう思う。

しかも、あのレオン様が人の為に自分から動いたのだ。

時間が戻る前にレオン様から約束なしで私に会いに来たことはあったが私の為ではなかった。その時はおかげで花嫁修業に遅刻することもあり、講師に迷惑をかけたこともある。

そして、講師に謝罪するのは私だったのだ。

それがどうだ。

セシルさんの為にオズワルド様に頭を下げたのだ。

何だかレオン様の成長を垣間見た感じだった。



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