第102話 レオンにも出会いがあるのか 2

バルコニーから少し離れた三段ほどの階段に腰を降ろしフゥとため息が出た。


やっと一息つけると思ったが違った。

急に、階段の壁の向こうからガサッと音がしたと思うと女性が立ち上がって出て来た。


先客がいたのかと思うと、女性は謝ってきた。


「す、すみません!」

「いや、こちらが後から来ました。驚かせてしまいました。すみません」

「すぐに去りますので!」


申し訳ないくらい恐縮させてしまった。

でも、私が王子だからだろうと思ったが、彼女は違った。


「お客様に気を遣わせるわけには行きません!ごゆっくりどうぞ」

「…お客様?」


お客様で間違いはないが。

私が後から来たから去ろうと思ったが、何故ここにいるのか聞いてみたくなった。

同じ所に逃げて来たと思い共感が湧いたのかもしれない。


「後から来たのは私ですから、私が去りますが…ここにずっといたのですか?」

「…夜会の時はここにいます」

「…何故?」

「…私の顔が醜いからです」


彼女の顔には髪で隠していたが、左のこめかみ辺りから上顎にかけて薄暗い痣のような跡があった。


「それは?」

「魔法草の取り扱いに失敗しましたというか…」


彼女はセシルと名乗り、リンハルト男爵の長女だった。先ほど紹介されたアメリアは次女のようだ。


リンハルト男爵家では魔法草も栽培しており、質がよく、魔素を含んだ魔法草を栽培する為に、魔水晶を使っていたらしい。

ここまではよくある栽培法だ。

だが、過度に魔素を含み過ぎると魔法薬にしなくても普通の人間には毒になることがある。

セシルはその被害にあったのだろう。


「つい先日まで、魔力回復薬を王宮が集めてましたので、効果の高い魔法薬を作ろうとしましたところ、魔素が強すぎまして…」


魔力回復薬を集めて…。

それはフェリシア様の為に兄上が集めたからだ。

だからといって、何故顔に?

魔法草が顔にたまたま当たったのだろうか。

しかし、罪悪感がある。

エルサのしたこととはいえ、責任は私にもある。

そのせいでセシルの顔がこんなことになったきっかけになったと思ってしまった。

ここにも被害者がいたと思うと頭を抱えて下を向いてしまった。


下を向くとセシルが座っていた足置きほどの小さな椅子と皿にフォークが見えた。

こんな所でこっそり食べさせていたと思うと自分のせいではと思い申し訳なく思った。


「スイーツは好きですか?」

「はい」

「でしたら、邸内で食べましょう。こんなところで食べる必要はありません」

「しかし、母が何と言うか…」

「気にすることはありません。私が一緒に行きます」


少し強引だとは思うがセシルを連れて、ビュッフェのある場所へと向かった。


「私のことはレオンと呼んで下さい」

「はい、レオン様」


セシルは全く私が王子と気付いてなかった。




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