第66話 加害者はあちらですよ

ヒース様と向かい合って座らされ、何だか取り調べをされているような感じだった。


「さぁ、吐け。二人で何をやっとるんだ」


ヒース様、これでは取り調べですよ。

加害者はあちらです。

ノートン親子が加害者ですよ。

ツアーガイドのようにノートン親子が加害者と書いた旗を持って言いたい。


「オズワルド様、生まれて初めて取り調べをされます」

「そうか。終わったら二人でゆっくり休もう」

「はい…でもヒース様が睨んでますよ」


二人で、ギンギンに睨んでいるヒース様を見ると、オズワルド様は、ハァーとため息をついて話し出した。


「わかった。真面目な話をするぞ」

「俺はずっと真面目だぞ」


そうでしょうね。


そして、ノートン親子の話をヒース様に説明し始めた。


借金の返済が滞っている為呼び出すが再度借金を申し込まれ貸したこと。

アリシアを以前から勧められていたがハッキリ断っていたこと。


「ノートンはワイナリーの投資をする話もしていたぞ」

「俺は投資するなんぞ言っとらん。気に入っていると言って、ノートンにワインを馳走してやったのだ。ノートンの投資に口を出すつもりはないともハッキリ言ったぞ」


「フォーレ伯爵のワイナリーのワインの献上の話はどうだ?そんな記録はないぞ」

「フォーレ伯爵のワインを献上するなんぞ言っとらん。あの時話していた献上のワインはブラッドフォードがコルクを卸しているワインの献上だ。いつもアレクに献上しているやつだ。ノートンが勝手に勘違いしたのだろう」


ヒース様はサラサラとオズワルド様の話を書いていた。


「あの宝石は?…呪いの宝石とわけのわからんことを言っていたが」

「調べてないのか?あれは、宝石にお守りの魔水晶をつけて、娘にやっただけだが。お守りだと娘にも言ったぞ」

「確かに、魔除けの魔水晶の破片があった。宝石は普通の宝石だったな」


魔除けの魔水晶?

呪いがわかるようにする為では?

疑問に思い、オズワルド様を見ると聞きたいことを察してくれたのか話してくれた。


「あれは、呪いに反応し、守ってくれるのだ。そしてその呪いは術者に撥ね返るが、アリシアは呪いを使い魔水晶がアリシアの呪いに反応して割れたんだ。撥ね返った先が使ったアリシアだからそのままアリシアが呪い返しを受けたのだ」

「では、アリシアが呪いを使わなければ、ただの魔除けだったのですか?」

「そうだな。自業自得というやつだ」


オズワルド様は、魔水晶の片割れで呪いがわかるように、持っていたことは言わなかった。

言う必要がないと思われたのだろう。

もし言えば、何故呪いを使うと見越していたか説明しないといけない。

ヒース様なら、言っても大丈夫と思うが、私達が時間が戻ったことを説明するとややこしいからだろう。


それに、確かに自業自得だ。

破産したのもノートン元男爵がよく調べもせず、金もないのに投資に手を出したせいだし、しかも元々借金だらけだったみたいだし。

アリシアに至っては自分の呪いが返ってきただけだ。


呪いを使わずにあの宝石をさっさと売れば、しばらくは平民の生活ができたのに。

その間に仕事を見つけ、真っ当に暮らせばこんなことにはならなかったと思った。


オズワルド様はそれさえも試すかのように、見越していたのだろう。

そして、ノートン親子は破滅の道を進んでしまったのだ。




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