2nd Range: 能力を下げる能力で最強を最弱に。

京天寺 きちえ

第1話 異世界から見たら日常は非日常

力はない、足も速くない、頭は良くも悪くない。特にこれといって特技があるわけでもない。赤塚刹那は一般的な高校生だった。だったのだ。

高2にもなって、夢も目標もなくダラダラと生活をしている。

近所のコンビニで雑誌を立ち読みし、お気に入りの菓子パン一つを買うのが日課にだった。

彼女はいない。部活はしてない。

スポーツも音楽も嫌いではないし、別に不得意でもなかった。

多くはないが学校に友人はいる。ただ毎日学校に通い、毎日勉強をして、寝る。


学校の屋上からは家々が見える。その奥にはビルが見え、さらに遠くに山が見える。

さらに奥にはきっと他の街があって、ずーっと奥には海があるんだ。

俺たちの世界は不幸な奴と幸福な奴がいて、俺はきっと世界で100番奴くらいに不幸せなんだろうと思う。

「あー。暇だ。何かいいことないかな。」

散りゆく桜の花びらを屋上から見下げ彼はつぶやいた。


ビーーーーーーーー

携帯電話から警報が鳴り響く。

「緊急魔獣警報!緊急魔獣警報!」

また魔獣が出たのか。避難しないと。


空には魔法少女、大地にはゴレンジャー、これが俺の日常だ。


下校時間過ぎの学校の屋上には珍しく誰もいない。いつもはカップルの2、3組がいるのだが今日は俺だけだ。

みんなもう体育館に向かってる。うちの学校の体育館は魔獣災害避難場所に指定されているから地域住民もこれから集まるな。


「ちょっと君。なんでまだココにいるのー?」


あっ。俺だけじゃなかったのか。


俺の黄昏タイムを邪魔したのは顔面偏差値70くらいの黒髪ポニーテール、貧乳、高身長のモデルのような女性だった。制服を着ているところから同じ学校の生徒のようだが、

腰には日本刀のようなものを差している。


「君、ここをすぐ離れなさい。」


美人に声をかけられて、人見知り気味だ。声が出ない。

「ねぇ。聞いてる?」

彼女は聞き返した。


「あっ。えっとー。」

俺はひたすら吃る。


「早く避難しないと危ないよ?魔獣警報が鳴ったの知ってる?」


そんなの知ってるに決まっているだろ。

そこら中のケータイが鳴りまくっているんのだから、聞こえない方がどうかしている。

というかこの人は何者なんだ。

俺と同じ制服なんだからこの人も非難しないといけないはずなのに。


「俺は大丈夫だよ。魔獣って現れるの久しぶりだしちょっと見たいなって思ってるんだ。」

「何言ってるの。あなた一般人なんだから避難しなさい。」


一般人とはどういうことだろう。

お姉さんはつまり一般人じゃないのか。

「実を言うと。一般人じゃないんだ(深刻)。お姉さんこそ危ないから避難しな。(キメ顔)」


俺は魔獣見たさに嘘をついた。


「あなたどこかの機関に所属してるの?」

この美人さん何言ってるんだ。

「いや。所属は……してないかな。」


「なら一般人じゃない。もしかして頭が弱い人なの?」


一般人だけども……いや……頭は弱くない。

この美人初対面の相手に失礼だぞ。

「もしかして。覚醒者なの?」

「覚醒……者?そういえば今朝、俺のエクスカリバーが覚醒してたな。」

覚醒ではなく正しくは勃起なのだが……。

適当に話を合わせておかないと避難しろと叱られるから仕方ないのだ。


「エクスカリバー!?具現型の覚醒者なのね。」

「試してみるかい。」


具現化……確かに俺のナニは具現化させれるが、仮にその意見が正とすると、男の大半は具現型となる。



「どこの機関か知らないけど、そこで見ててもらえますか。あの程度一撃で倒して見せますから。」


そう言うと彼女は突然、空を見上げだ。


彼女の見上げる先には山羊のような巻き角、鹿や牛のような髑髏、身体はどうやって動いているのかわからんがどう見ても唯の骨。四足歩行の足の蹄には雲のような煙が付いて、象くらいの大きさがあった。


「あれが魔獣か……なんか思ってたより小さいな。」


鳴き声も上げず、じーっとこちらを見ている。

見ると言っても目のようなものは見えない。

鳴き声はあげてないがカタカタと音がなっている。


「.....」

彼女は何か呟いて日本刀を抜刀した。

次の瞬間、彼女の日本刀から斬撃が飛び出し、

上空の骨は頭を中心に綺麗に左右二つに分けられた。


骨はどう言うわけか二つに別れた骨は煙をあげ消滅して行く。

煙が全て消えた後に残ったのは薄紅色の宝石のようなモノが残り、落下する。


ピキュィーン。


俺の近くに落ちてきたそれは、形状は六角柱で、リレー走のバトン程度の大きさだった。重さにして…

触れた瞬間に俺は意識を失った……。

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