アイリス

風が吹けば揺れる

慰めにも近い言葉が

綴られている手紙には

遅すぎた菖蒲が添えられている


どうして

どうして

遠くへ行くの

ここはもうあなたには用済みなの

どうして

どうして

言葉を重ねても

その頼りない声が耳に残るの


愛しても愛さずとも傷は残る

繰り返して繰り返して

深くなってゆく

嫌いよ 好きよ

ごちゃ混ぜの感情が

私の胸を引っ掻いていく


感傷に浸る間もないままに

時間だけが過ぎ去っていく

割り切れるほど強くない

曖昧に存在だけが生き続ける


線上に立っていられただけ

それを幸せと呼べるのか

まだわからないまま満たされることなく

目を閉じ続けた


どのように

どのように

君は生きてるの

少しずつ薄れてゆく姿はまるで

どんなに

どんなに

恨みを重ねても

散っていく花のようだ


傷つけても傷つけずとも愛は残る

繰り返して繰り返して

深くなっていく

終わりより始まりより

埋められても

私の心は未完成のまま


不意に訪れる記憶の澱は

私の胸に根を張っている

私の心を知ることはないでしょう

この手紙が君に届くことはないでしょう


咲き乱れた紫色

昔の私を見ているよう

わがままだと思うならそれでいい

ただただ離れたくなかった


捨てても捨てずとも祈りは消える

繰り返して繰り返して

ずれてゆくだけ

愛して傷つけた

最愛の想いだけが

足枷として繋ぐのでしょう


何事もなく

息をするために

我が写身を

火の中に落とした

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