柊の冠
冷たさの先には燐光が降り注ぎ
小さき命たちが踊り歌っている
眠りへと誘う花の香りには
永遠への祈りが込められている
充満する数多の死の彷徨
幻想の背後に蠢く亡霊
炎上する悪意から零れるエゴ
足を引き摺り下ろす枯れた声
「ただ一瞬の油断も許されない
歩みを止めるものは何か
空想と現実の境界は曖昧となり
こうべをたれひれ伏すはどちらか」
今
吐き出された感情は還り
その力を以ては放つは自己
またその代償も自己
誰がために死ぬか
「あなただけは許せない
あなただけは私の全てを奪った
あなただけが私を愛し
あなただけが私を裏切った」
「私だけは許せる
私だけが私の全てを奪い
私だけが私を愛し裏切り
そしてこの身を儚くする」
呪詛を並べ愛し凍てつかせる
天は雪を降らせ黒を塗り潰し
浄化された下ではなお這いずる
我々の体はとうに動けなくなり
あるいは埋もれ糧とされる
残響する鈍色の狂言
闘争本能から生まれた忘却
燃え残ったカーマの灰に従うエス
耳元に囁く沈んだ声
「ただ一瞬の油断も与えられない
歩みを止めるものは何か
その手に握るナイフが刺すのは
我等か汝らか」
花畑に鎮座する柊の冠は
我々に救いをもたらそうとしたのだ
痛みを以て得るは懺悔か消去か
その時まで我々の妄想が消えることはない
美しく咲かれた花の玉座は
今もまだあなたの帰還を待っている
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