第7話 ログ 終了報告

「せと、くん? 」

 見開いた眼。

 ぽかんと開いたその口から、近親者への、呼び掛け。


 せと、セト、瀬戸。

 かな? 。


天森 創あまもり はじめ? 」

 これこそは、虚勢だ、うん。

 震えそうな声を張って、瀬戸君がただす。

「何故、僕の名を」

「なぜって、だって、クラスメイトじゃない? 」

 正体不明の仮想敵を前に盛大に身バレしていく瀬戸君。

 スクカだ、スクカなんだな、よしよし。

 さりげなく(?)戻した護身具、防弾防刃防眩グラサンの薄い茶色越しにも瀬戸君の動揺がはっきり読み取れる、ファイッ、思わず応援したくなるほど。


 や、それほど甘い相手じゃなかったよ。


 無警告最大火力の紅蓮ぐれんに私は包まれた。

 特大のファイア・ボール。


「!!」


 声にならない悲鳴を発し天森嬢が隣で飛び退き、固まる。


「ふざけるな!! 」


 そして瀬戸君は絶叫していた。


「なるほど、既に二人焼いたか」

 先の精神感応、天森嬢を経由するまでも無く、今や情念だだ漏れの瀬戸君を直接読み下していった。


「イジメ、不登校、そして報復、数え役満だね」


 平然と会話を続ける私に、瀬戸君はただ口をぱくぱく。


「どうして……」


「素人の不意を打って焼くのはわけない、幾らでも、魔法使いの君ならね」

 大した想念、火力。

 集中、そして凝結。

 称賛しよう。


「でもプロには通じない、それだけだよ」


 ヒーリングの裏返しが危害能力。

 つまり、共感を排除出来れば、及ばない、それが、魔術の基底。

 なので結界も張る、想念は凝固させる。

 瀬戸君の仇は既にネガティヴに、完全なる共感同期を果たしていた。

 たっぷり灯油に浸しておけば、マッチ一本でも盛大に燃え盛ったものだろう。

 防燃難燃の装甲戦闘機動兵を、マッチ一本では、ねえ。


「でも安心したまえ、今の日本では君を裁く法的整備は」

「わあああ!! 」


 交渉ネゴは通じなかったよ。

 さっきの乾坤一擲けんこんいってき、全力一発で魔力枯渇MP0だろ、無茶すんなや。

 生命力の最後の一滴まで投げ打って特攻、でもごめん、ムダ弾丸だまだ。

 て、やば。

 野砲の一撃の如き瀬戸君の最後っ、無指向性想念打撃は私個人を標的とせず、この場一帯を叩いていた。

 突風ほどにも影響を受けていない、私は、だが。


「相変わらずの不手際だな、櫻井」

 全国の櫻井さん大変申し訳ありません責はこの一身に。

 よろける保護対象をやさしく抱き取り、返す刀で皮肉の一つも交えず部下を面罵めんば

 魂が乗った気弾でしばかれた。

 抵抗技能レジストを持たない、一般人なら即死の威力で! 。

 ああ全く部下想いな綾香さま! 。

 そうとも、保護対象がさらされた危害を直後その失態を身体で! 直に! 学習させる! これ以上の教育的指導はない! 。

 霞む意識の最後に何とかかんとか。



                               ログ1 END

 


 

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る