大きな大きい鯉のぼり

影神

愛と絆



毎年。5月が近付くと、家の庭には、




大きな大きい鯉のぼりが空へと游ぎだす。




その中でも一番、大きな大きい、




黒のお父さん鯉のぼりは、




本当に生きているかの様に揺れる。




大きな眼はまるで空から僕らを見ているようで、




小さな頃には怖いとすら思っていた。






弟が出来た僕は、弟に両親の目がいっている事に




少なからず不満を持っていた。




弟が一人で自由に歩けるようになった頃、




ある日僕が部屋で一人で遊んでいると、




両親が慌てていた。




僕「どうしたの?」




両親「あの子が居ないの!」




僕は窓から見えた弟が、外で遊んでいる事に




何の疑問も無かった。




両親が一緒に居ると思っていたからだ。






どうやら弟は一人で外へ出て行ってしまったらしい。






外は昼間だと言うのに、空は紫色になり、




ピカピカと光ながらゴロゴロと音を鳴らした。




留守番を頼まれた僕はびくびくしながら




布団へと入った。






風が吹き、窓ガラスがガタガタと揺れる。




すると、黒い影がユラユラと窓を、




行ったり来たりする。






僕は怖くなったが、




何だか呼ばれている様な気がして




ゆっくりとカーテンを覗いた。






外には黒い鯉のぼりがゆっくりと、




庭を自由に動いていた。




『オトウトヲサガシニイカナイト』




黒い鯉のぼりは僕に話しかけてくる。




僕「え?」




黒い鯉のぼりはゆっくりと背中を窓に近付ける。




『ダイジョウブ。ボクガオトウトヲタスケテアゲル』




僕は少し迷って、怖かったが、背中へと乗った。






鯉のぼりの背中はとても柔らかく、




何故か暖かかった。




山の付近まで行くと、ポツポツだった雨は、




大粒の雨となって、僕たちを襲った。






黒い鯉のぼりが頂上まで行くと、




目の前に黒い人形の影が見えた。




僕「弟だ!」




その黒い影は弟をがっしりと抱えている。




影「チキショー、ミツカッチマッタカ」




弟は僕達に手を伸ばしている。




ゴロゴロ〰️ピカピカ〰️




風は強くなり、雷が降りだした。




ゴロゴロ〰️ピカピカ〰️






黒い鯉のぼりはただ、黒い影を追う。




僕「どうして鯉のぼりさんは助けてくれるの?」




黒い鯉のぼりは必死に影を追う。




『ダッテ、ミンナ、カゾクダカラ』




僕は少し胸がモヤモヤした。




僕はずっと前から弟ばかり可愛がられている事に、




嫌気が差していた。






"弟なんかか居なくなっちゃえ、




弟なんか生まれてこなきゃ良かった"






そんな事まで思っていた。




僕がきっとそんな事を考えてしまったから、




弟は拐われてしまったんだ。




僕「僕は弟に酷い事を思った。




でも、本当はずっと一緒に遊びたかった。」




『キミガ、ソウ、オモッテイタコトヲ、




ボクハズットシッテイタヨ。』




僕は涙が止まらなかった。




いつしか僕と黒い鯉のぼりは、




ビシャビシャになっていた。






遂に黒い鯉のぼりが、影へと追い付くと、




影は手を上げ、下へと振り落とした。




ゴロゴロ〰️




その瞬間、雷が黒い鯉のぼりへと堕ちた。




僕「わぁ、、」




黒い鯉のぼりは隙を見て、影に尻尾を当てた。




影「わああ、、」




影は弟を離した。




上から落ちてくる弟を僕はキャッチした。




僕「ずっとずっとごめんね、、」




弟は僕に抱き付いて泣いていた。






空から落ちる僕を怪我をした




黒い鯉のぼりが受け止めた。




『オウチヘカエロウ、』




黒い鯉のぼりはゆっくりと、家に向かった。




僕達を下ろすと、黒い鯉のぼりは燃えてしまった。




『モウ、ハナシチャ、イケナイヨ、』




僕達は安心したからか、大きく泣いた。




両親がちょうど帰ってきて、




僕達を抱き締めてくれた。




両親「2人とも何処へ行ってたの。




すごく心配したんだから、、」




僕はその時ちゃんと愛されてるんだと自覚した。






それから僕と弟で一番大きな鯉のぼりを作った。




黒く輝くカッコいいあの鯉のぼりを。






毎年。5月になると実家の庭には、




弟と作った大きな大きい鯉のぼりが




まるで、生きているかの様に空で游いでいる。






黒のお父さん鯉のぼりの、大きな眼は、




空から僕らを見守ってくれてるようで、




今では、とても誇らしく、感謝すら抱いている。
























































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