第8話 マリアンヌの右手を握って。

 くしゃくしゃくしゃくしゃって頭を撫でられたあたし。


 なんだか気持ちがよくってそのままその手に頭を自分から擦り付け。



 あれ?



 なんだか身体が熱いよ?









 なんだか身体が引き裂かれるような感じ。痛くは無いけど、気持ちが悪くなってきた。


 ほてってほてって。そんでもって、なんだかあたし、消えちゃいそうな……。


 溶けて消えちゃうよ……。


 ああ。ふにゃぁだ……。





 これは、本当のマリアンヌに戻るって言うことかな……。


 あたしは、やっぱり要らないこかな……。


 悲しい……。


 ダメだ。


 悲しいけどもう涙も流すことができないなんて。



 ああ。もう。げん、かい……。





 走馬灯のように世界が見える。


 ゲームが起動しなくて買いなおそうとお店に来ているあたし。


 同じのが無くって、別のゲームと交換してもらってた。


 ああ。あたしはもうこの世界にも帰る場所が無いのか……。




 塀の上で寝ているあたし。


 うん。気持ちのいい風。


 みーこ!


 って呼ぶおかさんの声。


 にゃぁ! ごはん?


 さっと起きるとそのまま庭へ降りる。


 縁側からお部屋に上がるとおかさんがごはんを用意していてくれた。


 ふしゃふしゃと美味しく頂いて。


 そんでもっておかさんの脚に頭を擦り付ける。


 抱き上げて顔を擦り付けてくれるおかさん。


 ああ、うれしいな。





 そんなあたしを見ているあたし。


 人のあたしも、猫のあたしも。もうちゃんとそこに存在している。


 じゃぁ、あたしは?


 どうすればいいの?


 このまま、消えちゃうの?





 そんな風に諦めた、その時だった。


 心の奥から手が伸びてきた。


 茉莉花! 捕まって!


 そんな声が聞こえて。



 あたしはその手を握った。その子、マリアンヌの右手をしっかりと。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る