第3話 マリアクエスト。

 あたしが友達から勧められて始めたゲームは、『マリアクエスト』っていう名前のゲームだった。


 主人公は聖女になって、騎士様に協力して魔物を浄化したりしながらいろんなクエストをこなしていくRPGの要素も入った乙女ゲーム。


 舞台が学園とかじゃないからあんまりギスギスとかしないんだけど、ライバルの聖女さまも出てきたりするって話だった。


 お気に入りの騎士様と好感度を上げていくと聖女の力も強くなったりして、最終的に聖女マリアの称号を勝ち取ったらエンディング。


 そんなゲームを始めてそのまま気がついたらこんな感じに猫になってたなんて。


 夢だ夢だと思ってたけど、ここまで目覚めない夢っていうのも経験ないし。


 たいてい夢の途中で目覚めるもんだよね?


 でも。




 まさかの晩ご飯の時間。


 美味しいミルクとササミのスープに舌鼓をうつあたし。


 トイレも恥ずかしかったけどベッドの脇に猫砂トイレがちゃんと用意されててそこでした。


 流石にベッドに零したら泣くよね。


 臭くなったベッドを想像したらとてもじゃないけど羞恥心の方が負けた。


 奥さま、ううん、お母様にブラシで毛繕いしてもらって膝の上で丸くなってると、ほんと気持ち良くてそのまま寝ちゃいそう。



 夜になってお父様が帰ってらっしゃってお部屋に来てあたしに頬擦りして。


「ああ、かわいそうなマリアンヌ。おお神よ、どうしてマリアンヌだったんですか!」


 と、お母様とおんなじ台詞をいうお父様。


「で、フランソワーズ、王の手紙はなんだったのだ?」


「ええ、マクシミリアン王子とマリアンヌの婚約は破棄、解消するって言ってきたわ」


「なんと! もともとマクシミリアン王子がマリアンヌに一目惚れして無理やり婚約を迫ってきたのだったのに。いくらなんでもそれはあんまりじゃないか!」


「ええ。このままじゃマリアンヌの名誉に傷がつきます。どうしましょうか」


「うぬぬ。どちらにしてもマリアンヌがこのままでは……。大聖女との面会はどうなっている?」


「明後日でなんとかなりますわ。なんとしても治して貰わないとですね」


「金ならどれだけかけてもいい。マリアンヌ、ああマリアンヌ……」


 そう、お父様はあたしの頭にグリグリとほっぺのお髭を擦り付けて。


 にゃぁ。どうなるのかなぁ?

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