15 偽物の最後



 たとえその思いが尽きてしまったとしても。

 たとえその記憶が消えてしまったとしても。


 もはや、この世界のどこにも正しい彼等の姿が見当たらなくなったとしても。


 私は、それがあった事を忘れない。


 大切な人たちが思って、考えた心の在りかを、私は知っている。


 私は集まった人たちに向けて「目覚め」力を行使した。


 この決着の全ては数年前に決まっていた。


 邪神の力に追いやられる前に、私のもう一つの力で彼らの意思を考えを「眠らせた」のだから。


 すると、彼等ははっとした様子で、「私は一体今まで何を」「どうしてこんな場所に」と周囲を見回し始めた。


 それを見たユフィが「どうしてっ。私の力が解けるなんてっ!」とうろたえる。


 すると、人々の中に紛れ込んでいてシンフォが、飛び出してきて、私を押さえつけていた兵士を倒した。


 隣国の兵士達も、どこからともなく殺到する。


 先ほどまで余裕の態度でいたユフィは、彼等の手によってすぐに捕らえられた。


 ユフォはきっと私を見て、睨みつける。


「あと、もう少しだったのに! やっぱり数年前にお前を殺しておくべきだったわ! どんな手を使ってでも!」


 それから彼女は、そのばの人達に洗脳の力を使った。

 けれど、私が解くだけなので、意味がなかった。


 ユフィは、いやユフィの偽物は兵士達に取り押さえられて、処刑台の下に歩かされた。


「嘘でしょう。どうしてこんな事に!」


 愕然としていた彼女は、さっと考えをかえて周囲に媚びをうりはじめる。


「そうだ。この私を、邪神を利用してこの国を征服するってのはどう? これ以上ない強い味方じゃない。あんた達のために働いてあげるわよ」


 しかし、周りの者は耳をかさなかった。


「誰か! 助けなさいよ! 私を助けた人間には、私の全てをあげるわ。どんな事でもしてあげる。だから私を殺すのはやめてちょうだい!」


 たんたんと処刑の準備をこなすだけだ。


 ユフィは最後に私の方を見た。


「ねぇ、フィアお姉ちゃん。お姉ちゃんなら、私を助けてくれるよね」


 そして、彼女はよりにもよって、床に頭をうちつけて自分の血に染まりながら、私にそう述べてきた。


 その姿は、在りし日のユフィの姿を連想させた。


 思わず一歩前に進む私だったけれど、そんな私をシンフォが引き留めた。


 彼は首をふってから、ユフィの顔が見えないように私の前に立った。


「呪ってやる! 人間ごときの分際で!」


 やがて、断罪されるべき人間に断罪の刃が落ちたのだろう。


 断末魔の悲鳴が上がった。


 すべて終わったのだ。


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