06 洗脳の力



 屋敷の中に入っていくユフィを、呆然として見送る事数分。

 我に返った私は、慌てておいかけた。


 傍にいた使用人に聞いて、ユフィが執務室に向かった事を知る。


 そこではお父様が仕事をしているはずだ。


 お父様が危ない。


 そう思った私は、たどり着いた執務室の扉を乱暴に叩いた。


「お父様! 大丈夫ですか!?」


 返事を聞くのももどかしく部屋の中に入る。

 すると、驚いた顔のお父様と、にこにこ笑うユフィがいた。


「お父様、その女の子から離れてください。そいつはユフィじゃありません」


 けれど、お父様は眉をひそめるばかりだった。


「何を言っているんだ。フィア。かわいい妹がやっと帰ってきたというのに。そんなひどい事をいう子に育てた覚えはないぞ」


 遅かった。


 きっと、ユフィが何かしたのだろう。


 お父様は洗脳されてしまったのだ。


 私はお父様にすがって訴えかける。


「違うんです。お父様は操られているんです。こいつはユフィなんかじゃっ、きゃっ!」


 するとお父様は、私の頬をぴしゃりと叩いた。


「いい加減にしなさい。可愛い妹に向かってなんて事を。今日はせっかくユフィが帰ってきためでたい日だと言うのに、部屋の中にこもって反省しているんだ」


 そして、お父様は使用人を呼んで、私を部屋に連れていくように指示をした。


 その使用人も、ユフィがいる事を、おかしとは思わないようだ。


「分かりましたご主人様。さぁ、フィアお嬢様行きましょう」


 お父様と一緒にいるユフィを見ても、驚いた顔はまったくしなかった。


 私は、その使用人の手によって自分の部屋に閉じ込められて、カギをかけられてしまった。


 あとでお母様が様子を見に来て、扉の外から声をかけてきたけれど、「可愛い妹にひどい言葉をなげつけたそうね。反省するまでこの部屋にいるのよ」と言ってきたので、すでにユフィの手にかかってしまっているようだった。


 このままここにいたら、危ない。

 ユフィから逃げなければ!

 このままでは、私もユフィに操られてしまうかもしれない!


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