キャロルの犯した罪

Jack Torrance

贖えない罪

17歳のキャロル アンバーは、その日に罪深き行為を犯してしまった。それは、金欲しさと彼氏を寝取られたという復讐の思いがキャロルを贖う事の出来ない罪に導いた。キャロルには、ロブ クラウスキーと言う彼氏がいた。そのロブが隣のクラスのスザンナ ベルッチとモーテルから出て来るのをキャロルは目撃してしまった。沸き起こる怒りと怨み。スザンナを辱める復讐をキャロルは考えた。あたしとばれずにスザンナを恥辱の滝壺に陥れるには…これだ。キャロルの脳内にレッドカーペットが敷かれたような一つの妙案がが思いついた。キャロルはそれを実行に移した。街には69ヘヴンズと言うアダルトショップがある。その店は女性が持ち込んだ使用済みの下着を買い取って第2と第4の土曜に街外れのガレージで店の常連客に売り捌いているという非合法すれすれの商売も商っていた。金策に困った若い女性達には密かに周知されていた。下着とその下着の所有者のポラロイド写真を69ヘヴンズに持ち込めば店主のダン カスティーユが写真の女性の容姿と下着のコンディションを査定して買い取り金額が決定されるというシステムだった。キャロルはこれを悪用した。先ずは親友のドロシーに頼んでスザンナのポラロイド写真を撮って来てもらった。そして、次は使用済み下着の準備。これは、キャロルは流石に自分の物を売りに出すのは抵抗があった。汚れた男達のマスターベーションのおかずに自分の使用済み下着が使用されるのはキャロルのプライドが許さなかった。そこで、誰の下着を持ち込むかという難題にぶち当たった。流石に、母親のアリスの下着は無理だとキャロルは思い、同居している祖母のハンナの下着を持ち込む事に決めた。晴天のキャロルの家の庭。物干し竿に吊されている洗濯物が心地良い微風にはためいている。キャロルは祖母の下着を初めて関心深く物色した。おばあちゃん、67の割には可愛い下着を身に着けてるな。淡いピンクとかライトグリーンとか。キャロルは一番地味で無難な純白のブラジャーとパンティをピンチから取り外してショルダーバッグに納めた。そして、69ヘヴンズに向かった。69ヘヴンズの女性が下着を持ち込む窓口は裏口の横にこっそりと設置されていて店主のダンは男性客の来客する表口の店番をバイトに任せて自分は裏口の査定に勤しむのを日課としていた。それは、ダンの使用済み下着への執着と愛着が彼をその業務に駆り立てていた。キャロルが窓口に姿を見せるとダンがニタニタと舐めずり回すような視線で「いらっしゃい」と言った。キャロルは、もじもじとしながら下着とポラロイド写真を差し出して言った。「あのー、これ、友達の物なんだけど…その友達が妊娠しちゃって親に内緒で中絶しなくちゃいけないの。それで、お金が必要になって。それで、これを売って来てちょうだいって頼まれたの。この下着を買い取ってもらいたいんだけど…」「それは大変だねえ」ダンがポラロイド写真を見ながら興奮気味に言った。ポラロイド写真にはブロンドヘアを靡かせてあどけなく微笑むスザンナが写っていた。「可愛いねえ、この子。それじゃ、ブラジャーとパンティを見させてもらうね」ダンが繁繁と見定めていく。「これはポイントが高いね」ダンが狂喜乱舞した。恥部が触れる部分に恥ずかしい染みがまだ残っていた。「臭いを嗅いでもいいかい。これが重要でね。洗濯してるのと履いて洗濯せずに持ち込んだ物とで買い取りの査定に開きが出るんだ」「ええ、もちろん」キャロルは即答した。ダンはパンティの股の部分に鼻を当てて思いっきり鼻から臭いを吸い込んだ。ダンは洗剤の香料を嗅ぎ分けて、それが洗濯済みの下着であると察知すると少し落胆の色を見せた。「残念だけどこれは洗濯済みだね。もし、これが洗っていなかったら50ドル上乗せして買い取ったんだけどね。そうだなあ。この子の容姿とパンティの染みはポイント高いから180ドルでどうだい?」「もうちょっと高くならない?ほら、友達の中絶費の事もあるし」ダンは顎の無精髭を摩りながらちょっと思案して言った。「よし、おじさんもこの子に看破すると思って200でどうだい?」キャロルは白い歯を覗かせて「ありがとう、おじさん」と微笑みを返した。祖母の下着とポラロイド写真と引き換えに200ドル受け取ってキャロルはほくそ笑んで家路に着いた。帰るなり母のアリスが尋ねてきた。「キャロル、昼間に家の敷地内で誰か不審な人を見なかった?」「いいえ、見てないわ」「今日、おばあちゃんの下着が盗まれたのよ。物騒であたし怖いわ」すると、ハンナがリヴィングから話に割り込んできた。「馬鹿な男だねえ。こんな、ばあさんの下着なんか持って行っちゃって。あたしの下着で今頃、淫らな事をしているんだろうかねえ」ハンナは高笑いしながらおかしがっていた。キャロルは祖母のその笑いに幾ばくかの罪悪感を感じつつも救われた。その頃、ハンナの下着とスザンナのポラロイド写真はジッパー着きの透明なビニールに入れられて値札のラベルには〈染み付き 380ドル〉と書かれてガレージに向かっていた。その一度の過ちを犯したキャロルの一家にこの1ヶ月後に悲しい出来事が起こる。ハンナの夫、キャロルの祖父に当たるグレッグが心筋梗塞で急逝した。70歳だった。しめやかに葬儀は執り行われ皆はグレッグとの別れを悲しんだ。祖父の葬儀から2週間が経過した。ハンナはグレッグの遺品の整理を始めた。書斎の机の鍵が掛かっている引き出しの中を整理していた時だった。ジッパーの付いたビニールの仲に盗まれたと思っていた自分の下着が入っていた。まあ、じいさんったら。あたしの下着で何をしてたのかしら。ハンナはグレッグにこんなにも愛されていたのかと今更ながら噛み締めて目が潤んだのも束の間だった。ブラジャーとパンティの間に隠れていた一枚のポラロイド写真。そこには見ず知らずの女の子があどけない表情で写っていた。ハンナの胸中に渦巻く不穏な空気。誰なの、この子は?もしかして、グレッグの隠し子とか…ハンナは急に心臓が締めつけられるように痛くなり脈が速まりその場に倒れた。ハンナは、グレッグの後を追うように2日後、天に旅立った。

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キャロルの犯した罪 Jack Torrance @John-D

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