プリンスミーツプリンス。腐女子歴54年の私の原点はこの童話

チェシャ猫亭

第1話

 私が6歳くらいの時、大好きな童話がありました。

「きんのりんご」。

 意地悪な継母に命じられ、イーダ王子が金のリンゴを探しに行く物語です。親切なお坊さんから話の出来る馬をもらい、火の山、水底、毒蛇など、数々の困難を乗り越えて、ついに金のリンゴのある王国に到着。


 しかし、馬は急に元気がなくなり、自分はここから先へは行けないと。仕方なくイーダ王子は、ひとりで城下町へ入っていきますが、苦楽を共にした馬が忘れられず、馬のもとに戻ります。と、なんと馬は死んでいました。


 驚く王子、そこへ白い煙がもくもくと。中から現れたのは、赤い衣に金の冠の美しい王子様でした。(以下、赤の王子と表記します)

 訳あって馬に姿を変えられており、誰かがこの国まで連れてきてくれなけば魔法は解けなかった、私はこの国の王子です、と赤の王子は言い、イーダ王子をお城に招きます。金のリンゴ、その他をいただき、イーダ王子は無事に帰国するのでした。


 この話が、もう、好きで好きで大好きで、何度読んだことか。継母が憎くて、黄色いクレヨンで顔を塗りつぶしたりした私。

 その後、絵本はどこかにいってしまいました。引っ越しの多い家だったので、処分されたか、よその子に渡ってしまったのか。


 しばらく、この話のことは忘れていました。

 私は11歳で同性愛の存在を知り、妙に惹かれてしまい、特にゲイを扱った小説、映画等を探しまわりましたが、何せ大昔のことで、なかなか見つかりません。

 そんな中、ふと思い出したのが「きんのりんご」。

 王子が王子と出会う。プリンスミーツプリンス、です。


 あれ、なんかおかしくない? 王子は王女と会うものでしょ。なんで王子様が二人なの?

 小さい頃は感じなかった疑問が、胸いっぱいに広がりました。


 もう一度、「きんのりんご」が読みたい、でも、あんな古い絵本、今更手に入らないだろうし。でも、なんとか再会したい。


「きんのりんご」を探し求める旅が、こうして始まりました。

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