第9話 魔王と〝うんのよさ〟
目覚めた魔王は逃げるコトリ・チョウツガイを追いかけた。
コトリ・チョウツガイは、おもむろに立ち止まった。そして振り返った。めっちゃニコニコして、めっちゃ泣いて、めっちゃ慌てて逃げていたコトリ・チョウツガイは、ピタリと足を止めた。表情はなかった。一切無表情だった。
目覚めた魔王は直感した。中身が入れ替わっていた。息を引き取った彼と入れ替わった私と同じように、コトリ・チョウツガイは誰かと入れ替わっていた。
おそらく、さっきからごちゃごちゃ喋っていた〝イツキさん〟とやらと入れ替わったのだろう。
だが、彼の命を引き換えに入れ替わった私とは違う。入れ替わったのは一時的なのであろう。そして、用事が済めばあっさり素のコトリ・チョウツガイに戻るのだろう。
おそらく、コトリ・チョウツガイと〝イツキさん〟とやらは、ビジネスパートナーなのだろう。つまりはドライな関係性なのだろう。
コトリ・チョウツガイは、
私とは違う。
彼氏に美味しく食べってもらって、胃の中でドロドロに複雑に絡み合ってひとつになった、私と彼の美しくイノセントな関係とは違う。
目覚めた魔王は
目覚めた魔王は、何の価値もない命に、とても控えめな
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身代り地蔵は、50ダメージを受けた。
身代わり地蔵は消滅した。
身代り地蔵は、50ダメージを受けた。
身代わり地蔵は消滅した。
目覚めた魔王は、50ダメージを受けた。
身代り地蔵は、50ダメージを受けた。
身代わり地蔵は消滅した。
コトリ・チョウツガイは、50ダメージを受けた。
目覚めた魔王は、50ダメージを受けた。
身代り地蔵は、50ダメージを受けた。
身代わり地蔵は消滅した。
チッ、ついていない。目覚めた魔王は舌打ちした。
そして、魔王は致命的なミスを犯した。とても控えめな
控えめな
目覚めた魔王は致命的なミスを犯した。勇者と同じだ。判断を誤った。
勇者は、今晩お楽しみで頭がいっぱいになって判断を誤った。
余計な追加攻撃をして、ホクト・ノースポイントを毒殺された。そしてパニックに陥って、上半身まる裸のタツミ・イヌウシをなますのように切り刻まれて斬殺され、そして自分はぐらんぐらんの首を蹴り飛ばされた。
目覚めた魔王は、嫉妬で
勇者ご一行の、アバズレにズルズルとただれた、うらやましくて
さらに、コトリ・チョウツガイと〝イツキさん〟とやらの
致命的だった。勇者も目覚めた魔王も、余計な感情に心を揺り動かされて判断を誤った。
そして、一切の脳波信号をイツキ・ケブカワのノートPCに移譲したコトリ・チョウツガイは、7本の
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〝かわのたて〟スキル発動。〝
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とくに効果はなかった。
とくに効果はなかった。
とくに効果はなかった。
とくに効果はなかった。
とくに効果はなかった。
とくに効果はなかった。
とくに効果はなかった。
そして、致命傷スレスレの50ダメージの
八面体の赤い字の刻まれたサイコロと、八面体の黒い字が刻まれたサイコロと、至って普通の六面体のサイコロだった。
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対象、コトリ・チョウツガイの本日の〝うんのよさ〟
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3つのサイコロはてんてんと転がった。
八面体のふたつのサイコロは、難しい漢字が刻まれた目を出した。ふつうのサイコロは「4の目」を出した。
コトリ・チョウツガイの本日の〝うんのよさ〟4。
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〝かわのたて〟スキル発動。〝
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3つのサイコロは「ふわり」と浮かび、そして、てんてんと転がった。それをてんてんと7回繰り返した。
コトリ・チョウツガイの本日の〝うんのよさ〟2。
コトリ・チョウツガイの本日の〝うんのよさ〟1。
コトリ・チョウツガイの本日の〝うんのよさ〟5。
コトリ・チョウツガイの本日の〝うんのよさ〟6。
コトリ・チョウツガイの本日の〝うんのよさ〟3。
コトリ・チョウツガイの本日の〝うんのよさ〟4。
コトリ・チョウツガイの本日の〝うんのよさ〟5。
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〝
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コトリ・チョウツガイの本日の〝うんのよさ〟14,400。
コトリ・チョウツガイが雷に打たれる確率は、最大で0.000034722222222……%。
この世界では、抽選確率計算を行う際、小数点4位以下を切り捨てる。
すなわち、コトリ・チョウツガイは、
目覚めた魔王は、嫉妬に駆られて、コトリ・チョウツガイを殺す最大のチャンスを逸してしまった。
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