第26話 やっちまった

「そこの二人何馬鹿なこと言ってんの」


 俺たちが互いを賞賛し合っているとき横から海斗に言われた。


「知ってるか? 百合は尊いのだよ」

「そうだ! そうだ!」


 そう言うとなんか哀れみの眼差しを向けられた。


「馬鹿なの? 馬鹿だよね? 二人とも」

「いいえ、馬鹿なのは蓮だけです」

「おいてめ、自分だけ逃げるな!」


 海斗の哀れみの目はさらに深みを増した。


「勉強と実際のバカはまた別種さ」

「要するに俺もバカだと?」

「その通り」


 確かにその通りかもしれない。

 

「俺は、俺たちはバカなのかもしれない」


 俺の言葉に蓮はぽかんとしている。

 それ認めちゃうのかよとでも言いたげな顔だ。

 しかし俺は話を続ける。


「でもな! 俺たちはそのバカに誇りを持ってるんだ!」


 俺の言葉に熱がこもる。


「百合が尊いと思うことは恥ずべきことじゃない。むしろ誇るべきことだ! だって何かを尊いと思うことは悪いことではないのだから!」


 終えは言い切った。

 とことん言い切った。

 

 周りは静かになっており、みんな俺のことを見ている。


 そして俺は気づいたのだ。

 ここは食堂だったことに……。


「あーあ。空やっちゃったね」


 海斗は呆れ顔で言ってきた。


「今気づいた……」

「だから後先考えないバカは」


 ほんとその通りです。

 弁解する余地すらありません。

 

「空、何言ってんの? 少し引くんだけど……」

「ほんとね」


 その後、俺は二人の嫁候補からも引かれてさらには蓮にも……。


「ごめん、俺にはみんなの前でそこまで言うほどじゃないわ」


 とお前にはついてけない的に言われた。

 裏切りだろ……。

 

 え、俺もここまで言うつもりはなかったんですけど。

 どうしよこれ……。


《一章 過去とやること 完》

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