記憶術を用いた作者なりの努力

 記憶術なんか使わなくても努力できるという人はいくらでもいるだろう。

 けれど、それは物凄く愚直な考えだ。

 効率よく、しかも忘れにくい。そんな方法があれば、それだけでセンスのない者の愚直な努力を上回れるかもしれない。


 記憶術で描写や表現や語彙などを覚えると、不思議な感覚に襲われる。

 通常、執筆の際は情景やイメージを文章に起こすのだが、記憶術を用いると、文章の方が先にスタンバってるケースが多くある。


 使われる時を今か今かと首を長くして待っているイメージ達と、それらを迎えに行く作者、みたいな構図が作りあがる。

 とはいえ、イメージ達もたまに世話してあげないと風化してしまう。しかし中には根強 く定着しているイメージ達も存在する。

 その世話をする行為を、作者は仕事中にしている。

 日常の仕事の中で隙間時間があると思うが、あの時こそ世話をする絶好の機会なのだ。

 記憶術の練度が上がれば上がるほど、少ない時間で多くのイメージを世話できるようになる。

 隙間時間で記憶をメンテナンスする、それが作者なりの努力である。

 


 せっかくの場なので、一年以上スタンバってるけ一向に出番が巡ってこないイメージたちを紹介しよう。


春楡の巨木、

寝起きの蓬髪、

警察の管掌、前途洋々たる

天鑑、

タイヤのトレッドマーク、

ジャッジシート、

湯屋、

巧まざる演出効果、

砲煙弾雨、

アルコール測温計、

蚕繭のような建物、

盤根錯節、

天佑神助、

イコール的な、

キャラメル色のカーディガン、

踏切の腕木、

あべこべな、

絹のように美しい髪、

茶色がかった奇麗な髪、

からっと晴れた太陽のような笑顔、

敷き詰めた落ち葉、

絹のような春霞、

手かせ足かせとなり、

小腰をかがめる、

フィンガーデッキ、

楽屋で声を嗄らす、

烏色の髪、

狂騒の動作、

玲瓏妖艶、

くすんだ金髪、

泰山府君の裁き、

光を反射しないガンブラックの、

紺屋の白袴、

快なりと楽しむ、

根治、

悟性の強い、

荒涼で不毛な土地、

ガーターベルト、

肌寒い街並み、

裁許を仰ぐ、

のどかなカントリーミュージック、

爆発するような騒ぎ、

ひっくり返すような騒ぎ、

刀掛けに安置された、

ウサギの足跡のようなえくぼ、などなど。


 思い出し始めると止めどがないので、ここまでにしておこう。

 ようするに言いたいのは、忘れないように復習してる、ということだ。

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