第32話確認

カオルの淡い水色の瞳が、ぼくを離さないとでも言うように捕らえている。

手を伸ばし髪の毛に触れられる。

また魔法を掛けられてるのか?

撫でたところがキラキラときらめく。

小さな星がキラキラと、ぼくの髪に付いては消える。

若干うんざりしたように、ぼくはカオルの顔を見た。

リキュールに一人で会いに行ったことがバレてから2週間が経つ。

そろそろ機嫌が直ってもいいはずだ。

いや、むしろ機嫌はいいのか…?

ぼくがリキュールに会わないと約束してから笑うことが多くなった。

だが無邪気な笑みではなく、意味ありげに余裕そうな笑みだ。

大人っぽい表情で穏やかに笑う。

その表情をまじまじと見てしまう。

「どうしたの?」

クスッと笑いながら優しく問いかけられる。

あれは何だったのか、そろそろ知りたい。

「カオルが夢に出てきたよ」

ぼくはカオルの表情の変化に注目しながら、恐る恐る話した。

カオルは少し驚いた顔をした。

「…どんな夢だった?」

「カオルが…すごく泣いていた。それと中々起きられなかった」

カオルは何か思案している。

「それは…恐らくおれだ」


「今日はちょっと意識が無かったみたいだけどね」

優しい顔で言われた。

サファイアのような瞳が煌めいている。

「じゃあ…何があったか覚えて無いの?」

レイジロウは低めのトーンで問いかける。

「レイくんが相手ならそんな酷い事しなかったでしょ?

それともしたのかな?アイツに会いに行った怒りで」

カオルは笑っているが、それは表面上だけで、内側では酷く怒っているのがわかった。

カオルに対する質問を考えるため、ぼくは黙りこくる。

レイジロウの様子を見て、カオルが口を開いた。

「…レイくんがおれに言わずリキュールに会いに行ったことを知った夜、すごく悲しかったのは覚えてる。

それで背中を擦ってくれた感触も残ってる。」

「あれはやっぱりレイだったんだね」

カオルは嬉しそうに言っている。

(夢の中にまで呼び出されたのか…ぼく)

疲労感と相まって、ぼくはグッタリうなだれた。

それをカオルは困惑気味に見ている。

「大丈夫?」と本当に心配そうに言った。

頷き、ぼくは一つ一つ確認するように聞いた。

「…夢の中のカオルはすごい怒って、泣いてたけど」

レイジロウは自分の振り回された怒りが、静かに再発する。

「おれを怒らせるような事するからだよ」

優しい響きだがピシャリと言われた。

カオルに顔を近づけられる。

急に近づけられ照れて顔を直視出来ない。

怒りを忘れたように照れてしまう。

やっぱりカオルは綺麗だ。

「レイ、おれを見て」中性的な綺麗な声が響く。

優しく両手を握られた。

昔にも両手を握られたことを思い出した。

だがあの無邪気な可愛らしいカオルではない。

「離して」

「嫌だ」はっきりと言った。

最近のカオルは大人っぽいのか、子どもじみているのか分からない。

レイジロウは困ったような顔をした。

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