1章3話『レピドデンドロン』
その森は緑寮の更に南側、竹林サピアの西側に隣接している。今朝、竹林サピアは静かだったので、おそらく昼にかけて、あるいは、午後に何者かが結界を壊したのだろう。
これを仮定しよう。
緑寮にはまだ幼い者もいるし、生命系の魔法は戦闘向きでないものが多いので、応戦しないとまずいだろう。道端で拾った真剣を振り回し、緑寮に走っていくと、
カナリ「遅い。何していたの!?」
カナリは倒れた数名の学生を並行治療中だ。カナリは最高学年の一人で、植物細胞を用いた傷の治癒魔法に秀でているうえ、数十種類のハーブを身体から生やして自在に操る。まさに魔法の天才で、今年度の緑寮のリーダーだ。
一方、
さて、
ただ、周囲に該当する植物さえあれば、半径10m程度で同時にコントロールできる。これは
カナリ「重症4人。皆蛇毒に。3人は降ってきた蛇に噛まれたの。」
降ってきた?あぁ、なるほど。寮の周囲を囲む木が邪魔なのか。寮の周囲の木を全て横倒しにできたら、蛇が降ってくることもなくなるだろうか。
腕や足から生えた
あぁ、なんでこんなことに・・・。
カナリ「噛まれたまれた子を解毒しないと。私ではできないから、中央に運ぶ必要があるわ。できるだけ早く。伝令は何度か送ったから援軍が来ることに期待したいけれど。」
カナリ「頼んだわよ。」
掛かってきた。紫の蛇にかまれたやつは毒で動けなくなる。気を付けろ。」
襲撃してきたのは蛇の魔獣だが、体色や模様の違いから大抵3種類に分かれている。2m程度のものが大半で、それらはシダで締め付ければ倒すことができたが、多勢に無勢。体力がそこを突く前に、問題の出所を止める必要がある。
やはり、結界が壊れたのだろう。それならば、結界をなおさない限り無尽蔵に魔獣が来てしまう。
カイト「今日は、土じゃなくて特殊な強酸の詰まった瓶。高速で投げると途中で割れて飛び散るようになっている。ちなみに、不発したら自分の腕が焼けることになっている。」
リンド「ちょっと。」
左を振り向けばカイトとリンドが瓶を手足から生やした
あぁ、そうやって使うのね。あれ。
新しい瓶を取りに帰る時間が惜しかったので、次に、
当然、その間も蛇は襲ってくるから
援軍は比較的早く、20分程度で到着した。どうやら、事態を察した他の連中が気を利かせて人員を自ら送っていたらしい。そのころには、緑寮の周りは
あずさ「相変わらずすごい有様になるよね。
あずさ曰く、“異星人よりも異星人らしい”らしい。
あずさ「さて、本題。中央からカイエン様に向けた伝令を出したの。あたしと
するとあずさと、
あずさ「わかった。個々の防御の交代は赤寮の人員を数人充てる。」
。彼女を守ることがこの作戦の最優先事項になる。
肩から生やした
10分ぐらい走ると、結界が結ばれているはずの大樹が見えてきた。幹の直径は5mぐらい。見れば、大きな穴が開いており、結界の役割を果たす岩石である、結界石は壊されている。
あずさ「分析はあとよ。
一応、
他の3人は大樹の周辺に散らばり、戦闘を開始した。
へぇ、才能あるなぁ—。ただ、肩に力がはいりすぎだ。
ひょっとして今、俺、少しイケてる先輩なのではないか。
大樹の周りに輪を張るように
今回は緑寮のときよりも密にレピドデンドロンをはりめぐらせた。
こんな一気に、魔法使ったのは久しぶりだな。
だが、それでも
あずさ「
遠くでは今も魔物たちが訓練所に突入している。それなのに、
「それなら、」
5体の大蛇を従える人間・・・だとすれば。
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