好きだと言えない二人の初めての◯◯
小砂糖たこさぶろう
初めてのデートでもない話
甲斐 猛、最近の悩みはお隣さんで幼馴染の摩美とめちゃくちゃエロい事をする夢を見る事である。
いや、エロい夢を見る事に関しては最近じゃない、小学四年生の頃か、まぁそのせいで周りより早く性に目覚めて悶々とする小学校生活を送る事になったがそんな過去はどうでもいい、問題は今だ。
なんせその夢が生々しく目が覚めると身体に疲労感がある。それに気まずい
邪な目で見てはいけないと知り合いのトレーニング器具を貰って性欲をトレーニングで解消しようとした結果、より激しいエロい夢を見る事になった。
不安でしょうがない、もし間違って彼女を傷つけてしまうかもしれないと思うと、ひたすらに身体を動かして鎮めるしかない
何故なら彼女の父による提案で摩美との同居が決まったからだ。
◇
「………………くっさ」
「悪かったって」
土曜日の朝、ショッピングモールへ買い物に行く待ち合わせにやって来た摩美の第一声に猛は土下座をした。
「…………………………………………………………くっさ」
「二度も言わなくていいだろ! 」
摩美は抗議する猛を無視して溜息を吐き冷蔵庫を開けて朝食の準備を始めた。
「朝ごはん作るので見てないでシャワー浴びて来てください」
「えっ」
「……部屋の換気忘れてトレーニングに没頭するぐらいなんですから、まだ朝ごはん食べてないですよね? 」
「う、うん……」
「着替えは持って行きますから」
「押すなって」
猛は脱衣場まで摩美に押され、いまいち納得出来ずに首を捻りながら風呂場に入りシャワーを浴び始めた。
「ふぅー」
火照った体を冷やして猛は息を漏らす。
(……そんな臭いかなぁ、自分の臭いってわからないとは言うけど)
『猛、着替えとタオルはここに』
「あ! あ、ありがとう」
扉越しとは言え自分は全裸、そして自分の下着も見られた事に気づき、いくら幼い頃からの付き合いがあるとは言っても恥ずかった。
「ごめん」
『………………………………………………………………なにが』
「い、いや、こうやって世話ばっかかけさせてるしさ! 摩美は家の事も一人でやってるのに」
『……別に…………父さんは研究で帰って来ないし』
「あ、そっか……」
『私に迷惑をかけてると思うなら自分の下着の管理ぐらいしたらどうですか? 』
「え? 」
『破けてます』
「嘘だろ!? 」
『……………………ん、私が捨てておきます』
「……本当ごめん」
『いいですよ、朝ごはん作って待ってます』
猛がシャワーを終えてリビリングに戻ると摩美はトースターとサラダ、ベーコンエッグとコーヒーを並べていたがその手を止めて猛に近づくと首筋に顔を近づけた。
「!? 」
「……ん、ちゃんと洗いましたね」
突然の事に猛は固まり、少し不満げな摩美は椅子に座る。
「何立っているのですか? 早く座ってください」
「あ、あぁ」
ショッピングモールに到着して早々摩美はため息を吐いた。
「なんだよ急に溜息吐いて」
「人混みが嫌なのです」
「えぇ……」
何しに来たんだよ、と言葉をグッと堪えて猛は摩美が人混みを嫌う理由を思い出す。
(人に見られるもんな)
スタイル抜群、見た目も美少女、意識している贔屓目なしに見ても猛は女優やアイドルより可愛いと思っているほど、学校ではそのクールさから男女共から人気で高嶺の花とも言える存在、ただ一つ疑問なのはそんな高嶺の花と四六時中一緒にいても何も言われない事だ。
「……面倒くさいですね、映画でも観ますか? 」
「自由すぎないか」
「貴方がどうしても行きたいと言うなら行きますけど」
「布団なりベッドなり買わなきゃ向こうで寝られないだろ? 元々あった奴は捨てるんだし」
「あぁ、そうでした……」
「しかし何で家具家電を一新するんだろ、まだまだ使えるのに」
「…………さぁ、大人の考える事はわかりません」
「まぁ、確かにな……なんで摩美の親父は俺と摩美を同じ家に住まわせようと思ったんだか」
「…………えぇまったく、本当に理解ができない」
不安そうに自分の腕を抱える摩美を見てますます父親とその親友である摩美の父親に対して猛は不信感を抱いた。
◇
「ここのショッピングモールは店も多いし、品揃えもいいから楽だな」
「そうですね」
引越し先に向けての買い物を終えた二人はベンチでコーヒーを飲んで一休みしていた。
「しかし高校に入学してすぐに引越しはめんどくさいよなぁ、どうせなら中三の春休みか今年の夏休みにしてくれたらこんなバタバタする事はないのに」
「忙しいのでしょう、二人とも海外だし」
「まぁなぁ……」
猛の父は外科医として、摩美の父は研究者として海外で名を知られており、滅多に日本に帰国する事ができない、しかし今はビデオ通話などで気軽に顔も見れるし声も聞けるので二人は寂しいと言う気持ちはあまりなかった。
「……この後暇だし映画でも見るか? 」
「いえ、まだ買いそびれた物があります」
「マジ? 」
「猛の下着です」
猛はコーヒーを吹き出した。
「いいだろそんなもん今じゃなくて! 」
「映画も特別観たい物がないから急ぐ必要はありません、貴方は下着の管理も雑ですしこの際まとめて買い替えましょう」
「何名案みたいか顔してるのさ!? 」
謎のやる気と共に立ち上がった摩美は猛の手を掴み男性の下着売り場まで早足で向かった。
「ほう、男性の物も色々な種類があるのですね」
「恥ずかしいからやめろって」
「何を今更」
「お前にまったく同じ事したら怒るだろ!? 」
「やれる物ならやってみたらどうですか? まぁ履いてもいない布切れを選ばれているだけで恥ずかしがるような貴方に私が履く下着を選べる事ができるとは思いませんが」
「ぐぬぬ……!! 」
今日一番饒舌になりやがって、と猛が拳を握っていると摩美は別の方向に顔を向けて何かを見ていた。
「……………………………………………………ありですね」
「…………はぁ!? 」
摩美の目線の先にあったのはブーメランパンツだった。
「ば、馬鹿か!? 」
「? 猛が身体を鍛えているのはゆくゆくはあんなやつを履きたいからでは? 」
「馬鹿! 身体を鍛えているのは趣味だ!! そもそも洗濯物を干す時に自分の下着と一緒にアレが干されるんだぞ!? 」
「ぷ、ぷぷ……刺激的ですね……! 」
「なんでちょっと嬉しそうなんだよ!? 」
「ふ、ふふふ……私には刺激が強すぎるので、普通の物にしましょう」
「当たり前だわ」
「じゃあ次は私の下着を」
「映画行くぞ!! 」
会計を済ませ、二人は映画館に向かい歩いていると背後から女性の悲鳴が聞こえて来た。
「ひったくりよ!! 」
「どけ!」
ひったくり犯に突き飛ばされた摩美に猛は慌てて駆け寄る
「摩美さん大丈夫か!? 」
「え、えぇ…………少し足を挫きました」
「────ベージュのニット、赤紫色のベスト、青いジーンズ、ピンク色の鞄」
「猛? 」
「少し待ってて」
様子が一変した猛は摩美を椅子に座らせると走り出す。客達の騒ぎ方を見てどこら辺にいるか大体の検討をつけ、人間離れの動きで追い詰めた。
吹き抜けから飛び降りて柱を伝って下に降り、人混みにぶつかる事なく二階から降りるエスカレーターの元へ向かうと走って降りて来たひったくり犯と鉢合わせる。
「な、なんだテメェ!? 」
有無を言わさず猛に全力で腹を蹴られたひったくり犯はエスカレーターに激突して気を失った。警備員に引き渡し警察官を説明して猛達が解放された時にはすっかり夕方だった。
「今日は濃い一日だったなぁ」
「すみません、私が変な事を言わなければこんな時間まで」
「気にすんなよ、正直一人で買いもんするよりかは人として生きてる実感が久々に湧いたし」
「怪我はありませんか? 四階から飛び降りていましたよね」
「鍛えてるから」
「……あ、ここで大丈夫です」
「部屋まで送るぞ」
「送り狼になられても不味いので、まぁそんな度胸はないでしょうが」
「言ってくれるなぁ本当、まぁそれだけ元気があれば大丈夫そうだな」
「はい、ではまた明日」
「おう! また明日な!」
◇
摩美は部屋に戻り、冷蔵庫の扉を開けてペットボトルの水を飲んだ。
「────危なかった」
二リットルのペットボトルを投げ捨て、ソファに腰を下ろし部屋の明かりを付けると壁中に猛の写真が貼られていた。
「ふふ、ふふふ……今日はいい収穫がありましたね」
鞄から取り出した"収穫"を見て摩美の顔に赤色の紋様が浮かび上がり光悦の笑みを浮かべた。
「んふふふふふふふ、あははははははははは!! 」
髪は銀色に染まり瞳が怪しく輝く
「出会った時から私の身体は猛色に染めらていましたが、私の五感はますます猛色に染めらます……!! 」
ビクビクと身体を震わせた後冷静になった摩美は立ち上がると壁に貼られた一番大きな写真に触れる。
「────猛はこんな私でも愛してくれますか? 」
夜見摩美、サキュバスの母と普通の人間の男の間に生まれたサキュバスのハーフでありがら、母よりも強いサキュバスの体質を受け継いでしまった少女である。
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