無名

枯崎 情

プロローグ

今、僕は独房の中にいる。



愛する妻、娘を亡くし、人生が狂った。



何かしたのかと問われれば、とても大きな大罪を犯した。



それはお世辞でも許せるものではない。






そんな僕は今、暗闇の中、僅かな月の光だけを頼りに一冊の本を読んでいる。



まだ世間では出回っていない本で、僕みたいな半端者で人でなしの咎人にぴったりの内容の本だ。



この本はどうやら出版停止になったようで、今ではどこを探しても手に入れられない代物となっている。



だからといって、この本の価値があがったわけでもない。



今でも無名の本である。







僕は再び、その本を開いた。。

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