勇者と魔王のゲーム
みし
第1話
幾万年前の太古の時代、至高神と破壊神の二柱は世界の支配権をかけた最終戦争を行っていた。
広大な無が広がる宇宙。そこにも秩序も混沌も存在せずひたすら無限の無が広がるだけの空間だ。時と言う概念すらなく、ただ悠久の無のみがそこには存在した。そこには神すら存在せず、空も大地も、動物も植物も当然の事ながら人も魔族も存在しなかった。
この無とは一体なんであろうか?それは最上の哲学者ですら理解出来ない代物であろう。空と大地が、動物と植物が、光と闇が、秩序と混沌が、陸と海が、寒さと暑さが、火と水が、重さと軽さが、人と魔族が、男と女が、渾然一体と混じり合いが無限に広がっているだけであろうか?そしてそこには濃淡すらなく色無き
しかれど悠久の無は悠久では無かった。そこには秩序と混沌が生まれたからだ。渾然一体とした無は秩序と混沌に分かれ、光と闇、大気と大地を生みだした。やがて秩序は天へと混沌は冥へと分離していく。その時、天を統べていた神が至高神であり、冥を統べていた神が破壊神と言われる。そして天と冥の間には大地と大気、陸と海、すなわち世界が広がっていたのである。
海は四界の境界を守り陸は四海の中央に位置する。四陸は平地と山に分かたれ、その間に川や沼や湖が産まれる。四陸は、寒さと暑さ、火と水で分かたれた存在である。寒帯、温帯、砂漠、熱帯を四陸と呼ぶものもいるだろう。四陸の中心には理想郷があるとも言う。そして四海と四陸には動物と植物が湧き上がり、最後に人と魔族が産まれたと言う。
やがて天と冥の間に生まれたこの世界を二柱の神が主権を廻って争う事になる。
至高神は配下の万の天使を引き連れ、
破壊神は配下の万の悪魔を引き連れ、
その戦火は狭まることなく拡大。世界全体を飲み込む大禍となる。
そこに至り至高神と破壊神の双方はこのままでは世界を手に入れる前に世界が滅んでしまうことに気がつき停戦。
二柱の神が欲っするのはあくまでも世界の支配権。滅んだ世界は支配出来ない。滅んでしまえばそこに広がるはかつての無。世界に無に変えれば神そのものも消え去ってしまう。それゆえ神々は協議の末、盤上で行う遊戯を作り、そのゲームに五十一勝した方が世界の支配権を握ると言う取り決めをした。
俗に勇者・魔王ゲームと言う遊戯はここに始まる。全世界を遊戯盤とし、至高神は勇者軍の駒、破壊神は魔王軍の駒を動かす陣取り。チェスと双六をかけわせた遊技と言うべきか。
勇者は
魔王は
つまり魔王軍は大駒を多数所有、だが行動自由度が低い。勇者軍は大駒を持たない。……が、行動の自由度が高いと言う攻守非対称の遊技だ。そして双方の駒が接触した場合、戦闘で勝敗を決し負けた方の駒を取り除く。是も
さすればこの遊技、
勇者軍から見れば、魔王の居る魔王城に辿り着く
魔王軍から見れば、
かくして
勇者側の駒は条件を満たせば復活可能。これを復活規程と呼ぶ。勇者もしくは魔王のどちらかの駒が除去されれば勝敗が決するが、この復活規程は序盤の勇者殺しを封じるために制定されたと言う。ともかく勇者が魔王の駒を排除すれば勇者の勝ち、勇者の駒を条件を満たした上で排除できれば魔王の勝ちである。
また、自軍に属する駒が退場する前に寝返った場合は強制排除。天使、悪魔、神などの高次生命体の遊技への直接介入は当然禁止にされた。
現在、至高神30勝、破壊神30勝、38分。
——かくして九十九度めの遊戯が開始の鐘を告げたはずだった。
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