商業で短編小説を書くことについて
柞刈湯葉
はじめに
このエッセイでは、「商業出版で短編小説を書く」という行為について、ぼく自身の経験から解説していこうと思います。
カクヨムにも毎日数多くの短編作品が投稿されていますが、長編シリーズと違って書籍化される機会は少ないので、もしかしたらカクヨムの利用者は「商業短編」というものに馴染みが薄いかもしれません。書き手の目線となれば尚更でしょう。それについて自分の経験がなにかの参考になれば、と筆をとりました。
もちろん、この話はぼく個人の経験に限定されますので、短編業界全体を代表するわけではありませんし、ジャンルにしても自分の属するSF界隈の話に偏ります。そのあたりはご理解のうえでお読みください。あと漫画原作業もやったことがあるので、ちょいちょい漫画との比較論が出てきます。
簡単に自己紹介をします。ぼくは第1回カクヨムWeb小説コンテストで『横浜駅SF』が受賞して作家になりました。その後、「今後は KADOKAWA でこういうものを書きたいです」と担当編集さんに言ったのにろくに書かず、その間に他社で短編ばかり書いて「短編SF作家」としての地位をまあまあ確立してしまった、といういささか不誠実な人間です。
2016年の暮れにデビューし、これまで出した小説は6冊(今月発売の新刊を含む)。うち長編が3冊、長編のスピンオフ短編集が1冊、純粋な短編集が2冊です。商業媒体に出した短編小説が14編、そのほかにコミカライズを含めた漫画原作が2作6冊あります。いちおう3年前から専業作家です。
なお、本稿での用語は以下のように定義します。
「商業」は、いわゆる出版社による媒体に掲載され、原稿料や印税が発生することを指します。世の中には Kindle Direct Publishing のような個人電子出版や同人誌で稼いでいる方もおられるでしょうし、カクヨムもリワードという制度で収益化ができていますが、今回の話には含みません。
「短編」は、それだけで書籍にする分量に満たない小説を指します。カクヨムコンテストに応募経験のある方はご存知かと思いますが、1冊の単行本は最小で10万字ほど必要です(7万字で出せると豪語している編集さんもいますが)ので、それ未満のものが短編小説となります。ぼくが書いているのはおおむね1〜3万字です。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます