【Web版】黒幕令嬢なんて心外だわ! 素っ頓狂な親友令嬢も初恋の君も私の手のうち ⇒(旧題)素っ頓狂な私の親友、ホントに手が掛かるんですけど
野菜ばたけ『転生令嬢アリス~』2巻発売中
第一章:素っ頓狂な友人令嬢のせいで、せっかくの『婚約破棄イベント』が台無しです!
とある夜会での騒動巻き起こす、国への裏切りと恋の成就
第1話 突然ですが、今しがた素っ頓狂発言がありました。
我が公爵家主催のパーティーで、突如勃発した大々的な婚約破棄。
そうじゃなくても周りが騒然としているのに、そんな中、明後日の方向から更に爆弾が投下された。
「えぇー?! お二人とも、ご婚約されていたのですかっ?!」
私はどうしても聞きたい。
婚約破棄なんだから、
前提として婚約している事は必須だ。
だというのに、何故今そんな分かり切った事を言ったのか。
と。
***
「カードバルク公爵令嬢・ローラ、もう一度言おう! お前との婚約を、今、ここで、破棄するっ!!」
そんな言葉から始まったこの婚約破棄は、この国の王太子・ルドガーが引き起こしたものだった。
彼はわざわざ言葉を短文で切って、相手の令嬢にもう一度そう言い渡す。
確実に、まるで強調するかのように告げられたそれは、どう見ても周りからの晒しものだ。
正直言っていい気はしない。
それにしても、だ。
(おかしいと思ったのよ、パーティー前日に呼んでもいないのに「出席する」なんて連絡を寄越してきたから)
私は、そんな風に昨日の事を思い出す。
おそらくこれをするために今日出張ってきたのだろう。
相手の立場が立場なので流石に「来るな」とは言えなかったが、前日になっての予定変更もこの騒動も、正直言ってかなり迷惑だ。
特にこの騒動は、招待客を満足させる義務があるホストという立場にとって最悪なものに近い。
「今までずっと我慢してきたが……これまでの私に対する無礼な言動の数々、もう見過ごす事は出来ないぞ!」
殿下は、はっきりとした物言いでそう告げた。
もう耐えられない。
否、耐えるつもり等は無い!
そう言いたげな目をした殿下は、かなり気を高ぶらせている。
「本来ならばこれまでの事を全て不敬罪の下に晒すべきだが、お前の父は国に多大な貢献をしている宰相だ。減刑をして破棄だけで済ませてやるからありがたく思え!」
証拠を突き付けない事をさも温情であるかのように言っているこの彼は、どうしようもなく偉そうだ。
しかしまぁ、実際に偉い立場の人間――生まれた時から敬われるべき人間としての振る舞いを求められてきたのだから、仕方がない部分はある。
が、婚約者の方も負けていない。
「……また、そのような世迷言を」
まるで鈴の音でもしたかと思ってしまうような透き通った美しい声に、私は彼女の方を見る。
淡い空色の長い髪と夜空のような深い青の瞳を持つこの女性が、王太子の婚約者・ローラである。
普段は『淑女の鑑』とまで言われる程の彼女なのに、やはりこんな所でさらし者にされたのが癇に障ったのか。
見目麗しく大人し気で実際にも普段は大人しい筈の彼女なのに、今の言葉はトゲトゲしている。
そして案の定それは、そもそも感情的になっている殿下の気持ちを逆撫でした。
「『世迷言』などと、なんと無礼なっ! お前、今すぐここで処刑されたいか?!」
顔を赤くしてそんな怒号を言い放った殿下に、私は思わず「これまた浅慮な……」と思いため息を吐いた。
公衆の面前でこんな宣言で彼女をさらし者にするなんて、あまりにも浅慮が過ぎるというものだ。
そもそも彼は、彼女がしたという『無数の無礼』を何一つこの場で明かしていない。
証拠が無いのか、そもそも言えるような具体的なものが無いのかか分からないが、どちらにしても彼女が本当にそんな風に言われるような事をしたのかを証明できない状況で権力を使って早々に沙汰だけを下そうとする当たり、やはり「浅慮」以外に言葉は無い。
それに、だ。
(王族のくせに、あまりにも沸点が低すぎる)
そう思わずにはいられない。
確かに「貶めてやった」と思った相手からそういう言い方をされてしまったら、カッと頭に血が昇ってもある程度は仕方がない。
私だって公爵家の令嬢だ。
彼とは立場上浅からぬ交流があり、その延長線上で彼が本来絡め手などという事をするのには向かないタイプの人間だという事を良く知っている。
良くも悪くも、彼は直情的なのだ。
思考よりも感情が先に動く。
それを私は「浅慮」と呼ぶが、「情に深い」とも言えるだろう。
そんな彼に一体誰が入れ知恵をしてこんな事になってるのかは知らないが、実際にそれを実行してしまったのは彼自身の責任だ。
彼は将来国を背負うべき立場なのだから、そこには絶対責任を持たなくてはならない。
(もう今年で15歳なんだし、そろそろ自分の感情制御くらいは出来るようにならないとマズいと私は思うけど)
そう思い、しかしすぐに「まぁ私には関係ない事だけど」と思考から早々に切り捨てた。
と、そんな事を考えていたから忘れていたのだ。
「えぇー?! お二人とも、ご婚約されていたのですかっ?!」
みんなの前で独り言にしては大分大きなその声の主の事を。
その声は、勃発した事態を前に残念ながら良く響いた。
だからこそ、それを聞いて一拍後に私は思わず頭を抱える。
(……そうだった、この子を野放しにしてはいけなかった)
そんな風に彼女の存在を失念していた自分に後悔するが、今更だ。
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