切なさの尺度 (短文詩作&α)

春嵐

切なさの尺度 female.

 生きてきて。この先も生きるのかと思うと、ちょっとだけ、微妙な気分になる。

 生きてきたことは、まあ、わるくない。そこそこがんばった。ちゃんと生きてきた。

 でも、ここから先も、こうやって生きていくのは。あんまり、たのしくない。

 仕事に行って。彼のことを考えて。仕事して。彼の面影を探して。彼のいない部屋に帰る。

 どこにも、彼がいない。わたしの人生から、彼の存在そのものが消えてしまった。

 切ない、と表現したらいいのだろうか。この、心が、きゅっと閉まってしまうような、それでいて心臓の音が聴こえてくるような、そんな感覚。たぶん、急激に心拍数が上がったせい。すぐに消えてなくなる。甘く、切ない気分だけを残して。すべていなくなる。

 彼が、いない。

 彼のいない日常が、これからの、普通。

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