僕は本当は本が好きじゃない

ジュン

第1話

「君は、本が本当に好きなんだね。いつも本を読んでるじゃないか」

三宅君はそう言った。

「そうさ。僕は人間嫌いだからね」

「なぜ、人間嫌いなんだい?」

「わずらわしいのさ」

「どんなところが?」

「いわゆる『人間関係』やら『コミュニケーション』やらが」

「それで君は本を読んでばかりいるわけだ」

「そうさ」

「でも、君は本当は人間関係を欲しているんじゃないかい?」

「……なぜ、そう思う?」

「大概の本ってものは、人間を描いてるものだろう?」

「自然を描いてるものだってある」

「そうだね。だけど、読み手に訴えるものがあるのは、人間描写だろうが自然描写だろうが、心の琴線にふれるからだろう?」

「何が言いたい?」

三宅君は言った。

「つまり、君は人間嫌いとは言うものの、心の奥底では人間関係を求めているんじゃないか」

「…………」

「人間というものは、人を恐れるほど、ますます人を求めるものさ」

三宅君は続けて言った。

「君は読書を通じて、その本の内容を理解しようとしているのではなくて、著者と『対話』しようとしているんじゃないか」

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僕は本当は本が好きじゃない ジュン @mizukubo

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