第1話①『今の世の中』と書いて、『絶望的な日常』と読む
穏やかな日曜の昼下がり。
暗い部屋で、ある1人の男がパソコンに向かっていた。
大きな笑い声がする屋外とは別次元であるかのように、この部屋の時間はゆっくりと流れていく。
横にあった缶コーヒーを飲み干し、その男は立ち上がった。
モニターには、
《冥福を祈ります аои》
という文字が浮かんでいる。
「さて、行くか」
開いていたノートパソコンを閉じてケースに入れる。
部屋に立て掛けてある鏡に映った、端整な顔の持ち主は──。
【葵 要(アオイ カナメ)】
長身の若者は、1つ大きなため息をついて部屋を出た。
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