第43話廊下でみた幻

万里は、中庭から自分の車に向かった。

その途中。色んな光景が、走馬灯のように駆け巡った。


自分が赴任(ふにん)して来た日の事・1年目の事…。


そして3階を見上げる。

「…河村?」

1年前の一般入学者選抜の面接の日を思い出した。

“すでにあの時に、僕は河村に恋をしていたんだろうな…”


そして、宿泊研修。

初めて寝顔を見たあの時…。

“寝顔、可愛かったな…”


そして、夏。

美有希が交通事故で家族を亡くし、記憶を失くした時──。

“あの時「K&Bのファンだ」って聞いて恥ずかしかったっけ。それと同時に、運命も感じたけど”

“記憶を取り戻した時、“この子は自分が守らないと!”って思ったんだよな──”


そして、冬。

バラの花束を渡した時の美有希の嬉しそうな顔…。

しかし、それを真紀に撮られてしまい、校長室に呼ばれてしまった。

“あの時は本当にビックリしたな。まさか校長先生も生徒さんと結婚していたなんて──”


そして、3月。

何とか初めての主担任を終え、安堵(あんど)した瞬間。

“僕のクラスだけ、全員退学する事なく1年生を終えられた。アルバムもギリギリ間に合ったし…”


そして、今。

離任式を終え、『最後の授業』を終えた。



万里は車に乗り込み、そのまま河村家に向かった──。

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