ゲーム世界転生
ここまでの話を聞いて『ゲーム』だの『前世』、『主人公』、『異能』と……パルスのファルシのルシがパージでコクーンな感想を覚えたはずだ。
俺は人に説明するのが上手い質でもないから猶更だろうし、申し訳ない気分で一杯だったりもする。
ここで細々と説明させて欲しいのだけど、まず、とにかく一つだけ受け入れて欲しい。
それは――
俺がゲームの世界へ転生してきた
ということだ。
それも伝奇的セカイ系青春冒険活劇RPGの!
といっても世界がゲームとして遊ばれている訳じゃない。
エンディングの辺りで、いい加減にゲームから卒業して大人になれと説教された挙句に仮想現実での出来事だったとバラされるとか、そういうのとは違う。
その観点でいったら、この世界は完全に独立した世界だし、俺が知ってるゲーム世界と似ているだけかもしれない。
でも、俺の予想が当たっていた場合、かなり高い確率で核ミサイルが落とされてしまう。
……納得いかないかもしれないが、とりあえずは信じた体で聞いて欲しい。
前世の俺は202X年に高校二年生だった。
だからって、いま現在の話じゃない。俺の体感では十七年前の話になるし、ここがゲームの世界と考える理由の一つだったりもする。
別世界の西暦202X年に高校二年生だった俺は、この世界の200X年に
零として生きてる誰かを、俺が乗っ取ってしまったわけじゃない。紛れもなく零は俺自身だし、ただ前世のことを忘れていただけだ。
これが妄想じゃないことは、すぐ証明できた。
過去ではなく、未来に起きることをゲームの知識で特定できたからだ。
具体的には二周目プレイヤー向けに解放される、あるボーナス――番号当て宝くじで確認した。
なんとゲーム開始直後の五回分に限り『10-1』『10-0』『10-1』『3-2』『33-4』と……なんだか意味深な数字に確定されているのだ。
一回目には間に合わず、まだ二回目と三回目だけを回収したものの……ゼロから三十三までの数字を二つ当てる場合、なんと千百五十六分の一となる。
それが三回分だから、驚くなかれ十五億四千四百八十万四千四百十六に一回の確率だ。
……ちなみに四連続は約一兆八千万分の一、五連続だと約二千兆分の一となる。これを偶然というのは、さすがに無茶というものだろう。
しかし、ここがゲームの世界と判明しても、ちっとも嬉しくなれなかった。……検証の余禄で七桁の現金を入手しようとだ。
どんなに大金を掴んでも、死んでしまったら意味がない。
そして『ちばらぎ市』が核で吹き飛ばされない為には、そのスイッチへ至るドミノを止めなきゃならなかった。
しかし、そのドミノが何なのか、まったく見当もつかない!
なぜなら俺は――前世の俺は、このゲームをクリアしてないからだ! それどころか遊べてすらいない!
多少の知識があるのは、このゲームを実況した動画を経由してだ。
なので俺は、真相だの黒幕、最適だったり必須な行動と……グッドエンディングへと至る筋道を知らない!
なぜなら動画も最後まで紹介してないから! ネタバレ禁止のルールで!
実況主と、無責任に言いたい放題な視聴者のコメント……それが持っている情報の全てとなる。
あとは同じメーカーの作品を遊んだ経験ぐらいか。つまり、前半部分以外は、何も知らないのに等しい。
嗚呼、あの時に『遊びの五番駅』の抽選に当たってさえいれば!
そして中途半端な知識の俺ですら、主人公の異能には敵わないと分かる。あれの代役なんて絶望的だ。
それに立場を乗っ取る形で進行させても、主人公でなければ解決不能なクエストがあったら詰んでしまう。
いや、そもそも俺に、あの
しかし、その最強無敵な主人公は、いまだ覚醒していない! 俺がイベントを横取りしてしまったから!
………………どうしよう?
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