第89話『私が居なくても 6』
雑誌の撮影に向かう途中、私は涼寧さんとメルシーさんに、告げた。
「おふたりで撮ってもらいます。明日、梅香さんは体調不良でしばらく活動休止と発表します。昨夜、事務所と、お母様と、話し合いました。意識不明なことは伏せます。おふたりも、その認識でお願いします。」
涼寧「……」
「もしものことは、想定しておいてください。」
涼寧「何よそれ……!梅香が」
「お願いします。臨機応変に対応してください。何が起こるか分からないのが、この業界です。」
涼寧「……」
メルシー「マネージャーさん、疲れてますか?」
「えっ」
別件でも、少し抱えているものがあった。しかし、アイドルに心配をかけているようではダメだ。
「いえ。大丈夫です。すみません。」
メルシー「……マネージャーさんも、無理しないでくださいね。」
「……」
車内は長い沈黙が続いた。そして、撮影現場に到着した。
「それでは、私はこの後、ARC-EN-CIELに付き添いますので。……2人ですが、いつもと変わらず、頑張ってください。大丈夫です。」
2人の不安そうな表情に後ろ髪引かれつつ、車を発進させた。
マネージャーと別れた2人は、撮影現場に入った。
メルシー「おはようございます!」
涼寧「……おはようございます。」
カメラマン「あー、おはよう!大変だね、梅香ちゃん、体調不良だって。」
メルシー「はい。今日は2人ですが、よろしくお願いします。」
カメラマン「うん!まぁ、まだ時間まで少しあるし、アイスでも買ってあげようか。糖分補給して、いい写真を撮ろ~う!」
雑誌撮影の後、2人はすぐに事務所のレッスン室に向かった。
ダンス講師「明日の『
メルシー「はい!」
涼寧「……」
メルシー「涼寧ちゃん。下向いてたってどうしようもないよ。」
涼寧「……分かってるわよ。」
メルシー「……うん。」
ダンス講師「じゃあ、10分後、レッスン始めるからね。」
メルシー「はい!」
ダンス講師が部屋を出て、ふたりきりになる。
涼寧「……もし……」
メルシー「うん?」
涼寧「もし、ふたりになっても……Marionette Melodyを続ける?」
メルシー「もちろんだよ。」
涼寧が頷く。
涼寧「……なら、よかった。」
メルシー「梅香ちゃん言ってたし。マリメロのこと、守ってって。」
涼寧「うん。」
メルシー「……明日も、頑張ろ。私たちなら大丈夫だよ。」
涼寧「……うん。ありがとう。」
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