第58話『追懐 11』
20分経っても戻ってこないので、私は急いで生物室へ向かった。鍵が閉まっている。
「開けて!開けて!!」
返答は無い。私は事務所に走った。
「失礼します!生物室に誰かが閉じ込められているかもしれません!鍵を貸してください!お願いします!」
「えっ、それはどういう」
「一緒に来てください!」
事務室のお姉さんと生物室に急ぐ。お姉さんが鍵を開けてくれて、私は中に入った。目に入ったのは、鬼の形相でこちらを見ている1年生数名と、ぐったり床に横たわる
「っ……!萌美ちゃん!」
彼女たちが逃げようとした。
「逃げるな!誰か、誰か捕まえてください!!」
周りの教室からなんだなんだと出てきた3年生のみんながわけも分からず彼女たちを捕まえる。事務室のお姉さんは救急車を呼んでくれた。顔中アザだらけの萌美ちゃん。
「……萌美ちゃん……?」
息してる……?生きてるの……?萌美ちゃん?ねぇ……返事してよ。怖くて声が出ない。萌美ちゃんの冷たい手を握る。萌美ちゃんが居なくなったらどうしよう。嫌だな、苦しいな、こんな気持ちは初めてだ。楽しくない。楽しくない。こんなはずじゃなかったのに。私のせいかな。私がお節介したから、こんなことになったのかな。あぁ、嫌だな。助けて、誰か。
目を覚ますと、目の前には白い天井が広がっていた。
「萌美!」
ママが駆け寄ってきた。
「萌美……萌美……!」
ママに抱きしめられ、胸がいっぱいになった。
「……ごめんね、ごめんね、ごめんね」
「……なんで?」
「なんでって……だって、気づいてあげられなかったからっ……」
ママの苦しそうな声。
「……ごめんなさい、ごめんなさいっ」
しばらくして、ママが私から離れた。
「
ママがそう言って、部屋の隅のソファーで眠っている千翼先輩を起こした。
「あっ……!萌美ちゃん!」
千翼先輩が私に駆け寄り、抱きしめてくれた。
「あぁ……よかった……」
私が病院に運ばれたのは、朝の8時。私が目を覚ましたのは午後3時。その間、ママと千翼先輩はずっと病室で私が目を開けるのを待っていてくれたんだ。ママは千翼先輩から私のことを聞いたのだそうだ。この日は病院でゆっくり、ママと千翼先輩とお話をした。
そして翌日。学校に着くと、校長室に呼び出された。
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