第35話『もういいかい 1』

 ダンスレッスンを終えたJoyfulenceジョイフルエンスの4人がスタジオから出てきた。


「お疲れ様です。」


凛果りんか「わー!お疲れ様です!」


千翼ちひろ「元気かな!」


桃莉とうり「ほんと、ずいぶん久々な気がするね。」


奈々なな「先週の雑誌撮影以来ですね!」


「そうですね。」


凛果「あ、私たちに用事ですよね。」


「はい。お仕事の依頼です。」


千翼「えっ、いつもみたいにメールでよかったのに!」


「偶然、ここを通りかかったものですから。」


桃莉「それでっ、仕事って何?」


「はい。ショッピングモール開店記念イベントでのパフォーマンスです。」


千翼「もしかして、ボナンサ風之江かぜのえプラザ!?」


「はい。」


凛果「え!すごい!大きな施設だよね!?」


「はい。かなり大きな仕事ですよ。」


奈々「どうして私たちに?」


「先月の雑誌撮影の様子をイベントプロデューサーがお聞きになったらしいです。」


桃莉「あー、あれはなかなかよく撮れたもんね。やったね。」


千翼「そうだね!」


最初の頃はなんとなく3人に合わせてやっている感じだった桃莉さんも、今ではすっかりアイドル業を愛してくれているようだ。


奈々「『ペンライト』を披露するんですか?」


「はい。」


Joyfulenceのデビュー曲『ペンライト』。


凛果「ねぇ、せっかくなら少しフォーメーションを変えるとか、ちょっとしたフリ変更とかしたくない?」


千翼「いいね!」


奈々「明日、先生に相談してみようね。」


千翼「うんうん!」


エイチフェスの出演が決まり、私がマネージャーを担当するようになってからずっと感じていることだが、Joyfulenceは他のユニットと比べ、群を抜いて「やる気」と「こだわり」がある。だからこそ、応援したくなる。しかしこれは、画面の外から見ている人には伝わりにくい。やはり華やかなオプティミズム♪や粉雪に目が行きがちになってしまうのだ。だからこそ、今回の仕事はJoyfulenceにとって大きなチャンスだ。


「開店記念イベントには、Joyfulence以外にも芸人さんやアーティストの方も出演します。」


桃莉「じゃあ、その人たちのファンにも見てもらえるってことだね。」


凛果「うん!」


奈々「ショッピングモールの開店記念イベントをそこまで盛大に行うなんて、珍しいですね!」


「はい。ショッピングモール内にかなり大きめのステージをもうけたことを、しっかりアピールしていきたいということらしいですよ。」


千翼「ほー!じゃあ上手くいけば、また呼んでもらえるかもしれないね!」


凛果「そうだね!うわぁ~!やる気みなぎってきた!!」


奈々「うん!」


桃莉「明日からまた練習がんばるぞ~」


千翼「おー!」


桃莉「えっ、千翼だけ?」


凛果「あはは、ごめんごめん」


奈々「もう1回やろ!」


桃莉「はいはい。明日からまた練習がんばるぞ~いっ」


凛果「おー!あれ?」


千翼「っふ、ふふ」


奈々「ごめん、ぞ~いっ、が面白くて……」


桃莉「も~」


最初から仲良しだったけど、より仲良くなってるなぁ。Joyfulenceは器用だ、とても。それがいい方向に転がることを願わざるにはいられない。

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