第25話『私たち、喧嘩してました。 4』

 金曜日。今日は久々に#Sweets Angelスイーツエンジェルのボーカルレッスンに差し入れを持っていく。ちょうど、今終わったところのようだ。


「お疲れ様です!」


#Sweets Angelに会うのはカップリング曲が『Jewel Balloonジュエルバルーン』に決まった日以来だ。Dynamic♥HeartダイナミックハートARC-EN-CIELアルカンシエルMarionette Melodyマリオネットメロディーなどが注目を浴び始め、そちらに付き添うことが多かった。#Sweets Angelはこの数週間で雑誌のインタビューがいくつかあった。付き添えなかったのが残念だ。まだ#Sweets Angelは少し心配なところがあるからなぁ……。


はる「あ!マネージャーさん!お久しぶり!」


「お久しぶりです。すみません、なかなか顔を出せず。」


佳子かこ「いえ、そんな。私たちより忙しいんですから。」


「あれ?萌美めぐみさんは?」


遥「おトイレだよ。」


「あぁ。」


何か違和感が。


「差し入れです。」


遥「わーい!ありがとうー!」


佳子「ありがとうございます。」


「はい。3人で分けてくださいね。」


佳子さんが箱を受け取る。


佳子「1人5個も!いいんですか?」


「どうぞどうぞ。」


戻ってきた萌美さんにお菓子を渡す佳子さん。


萌美「え!わ、ありがとうございます!」


「いえいえ。」


萌美さん、顔色が悪いな……。


遥「私のは?」


萌美「あっ、こ、これ、どうぞ!」


遥「えへへ、ごめん、ありがとう。」


あ……。佳子さんと遥さん、一切目を合わせないんだ。


佳子「マネージャーさん、ありがとうございました!すみません、お先に失礼します!お疲れ様でした!」


佳子さんが帰る。


遥「……私も帰ろー。お疲れ様!」


遥さんもそそくさと帰ってしまった。萌美さんがふらっと床に座り込む。


「だ、大丈夫ですか!?」


萌美「……なんか今日、調子悪くて……。原因は、分かってるんですけどね……」


「……遥さんと佳子さん、喧嘩中ですか?」


萌美さんが両膝をかかえてうなずいた。


萌美「……ふたりの間を行き来するの……疲れちゃいました。……千翼ちひろ先輩に会いたいなぁ。」


私がいない間に、#Sweets Angelがこんなことになっていたなんて。自分の力不足を感じ、虚しくなった。


「……萌美さん、もう帰りますか?」


萌美「えっ、あ、はい」


「送ります。」


萌美さんが目を潤ませる。


萌美「……ありがとうございます。じゃあ……ちょっとだけ、わがまま行ってもいいですか?」


「はい。」


萌美「千翼先輩のおうちに、行きたいです。」

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