第22話 僅かばかりの希望と先輩の想定内
「さてさて〜、キミはどっちから撮るのかなぁ〜? 解放的なスク水姿とは対照的に部屋の隅で小さく蹲ってる後輩な小悪魔ちゃん? それともちょっぴり刺激的なブルマ姿で太ももとかお尻をケモノな男の子に見せつけちゃってるパーフェクト美しい先輩の私?」
窓から夕日が差し込む写真部の部室で、銀髪美人の最上級生が一人の男子生徒をこれでもかと言わんばかりに煽っていた。
紺色のブルマに宿るムチっとしたお尻を存分に活用しながら。
その一方で部屋の隅で、赤髪美少女が縮こまりながらビクビクしていた。
群青色のスク水に宿るスラッとしたボディラインを必死に隠しながら。
そんな二人の様子を、オドオドしながら眺めていた数馬は恐る恐るミリアに質問する。
「えっと、撮らないという選択肢は」
と。
僅かばかりの希望を込めて。
だが、その希望はすぐさま打ち破られた。
「あると思う〜?」
「あぁ、やっぱり無いんですね……」
部活の先輩から数馬に向けられた満面の笑みの裏から感じる、重い圧力によって。
「と言うより、なんで私までやらないといけないんですか……部長だけですればいいじゃないですか……」
部室の縮こまっているだけでは事態の収拾に向かわないと察したのだろう。千尋は体のラインを隠したままミリアに抗議した。
その千尋からの抗議に対し、ミリアは真摯に向き合う。誤魔化し無しに、真剣に。
「確かに小悪魔ちゃんの言う通り、初めは私だけでチビ助くんの性欲を刺激してみようかなーと思ったりしたのよ? でもね、よく考えたらそれじゃあチビ助くんが不公平じゃない」
「藤宮先輩が、不公平……?」
ミリアの言葉に身に覚えのないのか、首を傾げる千尋。
それでもミリアは言葉を続ける。
「だって昨日のチビ助くんへのリフレッシュは中途半端に終わっちゃったじゃない? それなのに、私たちの欲望ばかりぶつけるのもおかしいでしょ? つまりそう言うこと」
と。
あくまで、数馬の為である事を主張する為に。
つまりは重要になってくるのは数馬の気持ち次第なのだが───
「あの、俺は別に昨日ので十分なんですが」
「と、藤宮先輩自身がこう言ってますが」
「でもカメラはずっと構えたままだし、妙に前屈みだし……ふふふ……。どうしてかしらねぇ〜」
どうやら、ミリアの目には何かが見えているのだろう。
数馬がついさっき発した言葉が心からの言葉ではないと、思っているのだろう。
視線をやや下に向けたミリアはより一層、笑みが深くなった。
それと同時に、千尋の顔が赤くなる。
「先輩が前屈みなのは、部長がえ、え、えっちな格好で誘っているからですよね!?」
どうやら、ミリアに遅れて千尋もある一点に視線を向けてしまったようだ。
だが、ミリアは一向に動じない。動じるはずもない。
「だってそれが目的なんだもの。当たり前でしょ〜?」
千尋の反応も、数馬の反応も彼女には想定内の事なのだから。
「言ったじゃない。チビ助の性欲を刺激するつもりだ、って」
一歩、ミリアが千尋に近づく。
「それに、拒否権は無いって言ったわよね、千尋ちゃん?」
さらに一歩、もう一歩。ずいずいと寄ってくるミリアの圧にとうとう根負けしてしまったのだろう。
「……今回だけ。今回だけですからね!?」
そう言っていた千尋の瞳は、少しばかり潤んでいた。
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