第20話 日が明けても、変わらずレッツ部活動

『熱酷くて学校行けそうに無い……。制服着ようとしてたらお母さんにこっぴどく怒られちゃった』

「むしろ、昨日の今日で学校来る気だったのか……。すごいな、一香は」

 早朝に届いた、体調の悪いはずの幼馴染からのメールにただただ関心する数馬。

 それに加えて

『というわけで、私がいないからって授業中寝ないでよね? 数馬のノート期待してるから』

 と、おサボり禁止の忠告まで届く始末。

 ここまで言われても尚、サボれるほどの肝は数馬には無い。


 だが、それで文句を垂れるほど性根が腐っているわけでは無く

「……まぁ、言われちゃったら本気を出すしかないよな」

 むしろ、珍しくやる気を見せていた。


 間も無くして、スマホの画面を閉じ制服に着替え始めるのだった。



 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



「あ、藤宮先輩。長柄先輩、今日はどうしてます?」

「一香なら今日は休みだけど……何か一香に用事でもあったのか?」

「いえ、来てないならそれでいいんです。むしろ来てたら大変な事になってたので……」

「……? 話が見えないんだけど、小鳥遊は一体なんの話をしてるんだ?」


 朝方の一香の忠告を守るべく、退屈な授業をなんとか寝ずに乗り切った数馬。

 そんな彼に投げかけられた、可愛い後輩からの不穏な質問。

 意地悪での質問ではなく、本気で心配している様子の千尋に訳が分からないといった数馬の不安の感情が表情に出る。


 そんな表情に、千尋は唖然とする。

「……もしかして、先輩、今日の活動どんなことやるのか知らないんですか!?」

「あぁ。容量を空けといてくれとしか無かったから」

「それでなんで、どんな事をやるのか追求しないんですか!? それだから、先輩はダメなんですよ!!」

「なんかごめん……」

 仕方なく謝る先輩に、「全くもう……これだから先輩は!!」と呟きながら怒りを露わにする千尋。


 そこに現れるは、余裕の笑顔を浮かべる美人部長、宮内ミリア。

「はいはーい、喧嘩はそこまで〜。楽しい楽しい部活動の時間ですよ〜」

「地獄の時間の間違いじゃ」

「はい、小悪魔ちゃんはお口チャック。本当に地獄にしちゃうよ〜?」

「地獄にされるのは困ります……」

「じゃ、そゆことで」

「んむぅ……」


 ニコニコと笑顔を崩さないミリアに終始圧倒される小悪魔後輩、小鳥遊千尋。

 数馬に向ける遠慮なしな態度はミリアには効かず、むしろ怯えているようだった。

 そんな二人を前に、怯えながらミリアに話しかける数馬。

「えっと、宮内先輩……? 今日の活動って、一体……。いつもの如く、服飾部から何か持ってきてるようですが……」

 数馬の視線は、ミリアが入ってきてからずっと彼女の持つ一つの紙袋に集中していた。


 その数馬の視線に当の本人であるミリアが気づかないはずも無く、これ見よがしに掲げ上げる。

「あぁ〜、コレ? この中にはね〜、スク水とブルマ体操服が入ってるの〜」

「へー、スク水にブルマですか」

 冷静。至極冷静な態度。

 まるでミリアの発言が当たり前のものであるかの如く冷静な態度の数馬。


 ミリアは終始口元を緩めていた。

 じーっと、紙袋を見つめながらピクリとも動かない数馬の様子を眺めながら。



 だが、その時間はそう長くは続かなかった。

 次第に取り戻す理性。

 戻ってくるは、正常な判断力。

 先ほどまでの冷静な態度はただの放心に他ならない。

 そして、真なる数馬の態度が現れる。

「は!?スク水にブルマ!!?」


『何を言ってるんだこの人は』と言わんばかりに後ずさる数馬。

 そんな彼を、変わらずニコニコと笑顔を浮かべながら見つめるミリア。

「ふふっ。今日の部活も楽しくになりそうね〜」



 彼女がどんな事を考えているのかは、誰も知る由も無い。

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