青春モルモット〜クラスでは冴えない陰キャくんは、部活では学年一の美少女達に弄ばれています〜
こばや
第1話 始まりは雨の降る放課後に
「梅雨なんて季節はこの世から消えればいいと思うんですよ。藤宮先輩もそう思いますよね。そうですよね、ありがとうございます」
「部室に来て早々凄いな、
藤宮先輩と呼ばれた男子生徒が、部室にかけてあったタオルを小鳥遊という女生徒にそっと手渡した。
雨が降り始め、予め彼女が部室に来ることを推測し、彼が準備していたものだ。
「あ、ありがとうございます。そりゃ文句の一つも言いたくなりますよ。外から女バレ部員を観察してたら急に雨が降るんですから!!」
「ナチュラルに盗撮してたバチが当たったんだろ。これに懲りたら少しは自重する事を覚えたらどうだ?」
「自重? なにそれ、美味しいんですか?」
「ダメだこりゃ」
懲りる気配の無い女子生徒に藤宮先輩こと藤宮数馬は大きくため息を
赤いサイドテールが特徴的な女子生徒の名前は
そんな彼女は学年で一二を争う美少女であり、それと同時に───
「そう言えば、健康診断の結果、小鳥遊にも届いたよな。どうだったんだ?」
「先輩が気にしてる身長なら伸びてませんよ! 漏れなくブービーですが何か!?」
「あ、そうなんだ……なんかごめん」
「謝らないでください、余計惨めになります」
小柄であった。
それ故に愛らしく、まさに守りたくなる美少女と言うやつだ。
この事が祟ってなのか、先輩である数馬に生意気な口を平気で聞くようになってしまったとかなんとか。現時点で特に、数馬は気にしている様子も無いのが幸いである。
加えて言えば、千尋は盗撮常習犯で、主な狙いは女子生徒。今さっきの女バレの話題は彼女の盗撮趣味の一環らしい。
写真部に入ったのも、堂々とカメラを持って歩けるからとの事。
そんな欲望に忠実な後輩に数馬は日々悩まされている。
「と言うか、先輩さっきから私の事見過ぎですよ。そんなに私の濡れ透け姿を拝みたいんですか? だったら百万円払うか奴隷になるかして下さい」
タオルで濡れた体と命の次に大事な赤いデジカメを丁寧に拭き終えた千尋は、チラチラと感じる数馬からの視線に注意を促した。
「隠す素振りすら無かったのにその言いようはないんじゃないか……?まぁ、目を背かなかった俺が全面的に悪いんだろうけど」
「物分かりのいい先輩は嫌いじゃないですよ。奴隷になりますか?」
「ならないから、さっさと着替えなさい!! 俺は外で待ってるから!!」
「先輩の意気地なし〜」
自身の非を認めながらも、女性としての恥じらいをさほども出さないどころか欲望に忠実な千尋に、数馬は大声を出しながら部室から飛び出す事しか出来なかった。
その際に千尋が発した煽り文句は数馬の耳には届かなかった。
脳裏に焼き付かれた、雨水で濡れた妖艶な後輩の姿に理性を抑えるのに必死だったのだ。
───────
一話目を読んでいただきありがとうございます。
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