第9話 セシリアの個室
悠里はセシリアに部屋に入るよう促され少し緊張気味に部屋に入った。
「おじゃましま~す」
「部屋の奥に入ってゆっくりしててください。私は少し身なりを整えますので」
と、セシリアはそう言い残して隣の部屋に入って行った。
悠里はセシリアの横顔を見ながらベッドの近くにあったアンティークチェアに腰を下ろし部屋を見渡した。
アンティークな装いで統一された室内は、学生寮と言うより高級ホテルや高級マンションのような印象を覚える。調度品も小物の一つに至るまで品も質もよく部屋の主の美意識を現していた。
長いこと牢獄のような部屋に住んでいた悠里とは全く違い部屋は複数あり、テレビなどの生活嗜好品や高そうなベッドも置いてある。
しかし先程からセシリアの入って行った部屋の方から水音のようなものが聞こえるのだが一体なんだろうか。
「流石に男がいるのにお風呂に入っているなんて無いと思うけど……」
と、口にしてみると若干セシリアが入浴している姿を想像してしまい高鳴る鼓動を悠里は抑えながら、おおよそ二十分程待ち続け、遂に痺れを切らした悠里はセシリアが入って行った部屋を遠目に眺め始めた。
流石に遅すぎるから安全確認だけしたほうがいいだろうか。やや腰が引けながらも悠里は椅子から立ち上がりセシリアの入った扉をノックしようとすると、ふいに向こうから扉が開いた。
「あら、お待たせしてしまいましたか? すみません。外から帰ってきたらすぐにシャワーを浴びないと気がすまない性分で」
「……」
現れたセシリアはほくほくと立ち込める湯気をまとっていた。それ以外に身に着けていたのはバスタオル一枚だけ。
しかも軽く巻かれただけなので、今にも彼女の大きな胸が今にもバスタオルから飛び出してしまいそうだ。
それに丈が短いせいか細くしなやかな太ももがこれでもかというくらいに露出して、火照り上上気した肌が色香を倍増させている。
「ちょっと着替えますので少々お待ち下さい」
セリシアは湿った髪の毛から水滴を艶かしく滴らせながら、硬直したままの悠里の横を通り過ぎ、寝室に向かっていた。
(やっぱりお風呂に入ってたのか!)
悠里は思わずそう叫びそうになったが、ここは女子寮で男の声がしたらまずいのでそうもいかない。
そのまま悠里は寝室に背中を向け時が過ぎ去るのを待った。
「おまたせしました。こちらへどうぞ」
「うん」
しばらくして声がかかったので悠里は寝室に入った。
しかしなんと言うか……予想はしていたがセシリアはお金持ちが羽織っていそうなバスローブを軽く羽織った状態で、机のそばに置いてあったゲーミングチェアのような椅子に腰を下ろしていた。
「なんと言うか随分とくつろいだ格好だね」
「まぁ自分の部屋ですからね。犯罪と言う訳でもないでしょう?」
それはそうなのだけど、なんと言うか目のやり場にとても困る。
だけど、それについて文句を言った所で話を聞いてくれるとは思えない。
悠里は諦めの溜息を付くと、先程まで座っていたアンティーク調の椅子に再度腰を下ろした。
その様子を見ていたセシリアが立ち上がり、用意していたコップにコーヒーを注いだ。
「悠里の分も用意しますがいかが致しますか?」
「お願いするよ」
「分かりました」
セシリアはもう一つコップを用意するとコーヒーを注ぎ二つカップを手に持ち、悠里の方へ向かって優雅に歩いてきた。
セシリアの太ももがチラチラと視線を奪うが、悠里は意識的に視線をそらして話を切り出す。
「それでさっきの話。序列制度の話を聞かせてほしいな」
「ええ、では空間ウィンドウにて説明するのでこちらに」
と、セシリアはベッドに腰を下ろすと悠里に隣に座るようにと急かしてきた。
(いや……え? この娘貞操観念がないのかな)
悠里は困惑したままセシリアの上気した顔を見続ける。
「ほら、早くしてください。隣に座らないと説明しませんよ」
「……わかったよ」
諦めの溜息を付いた悠里は椅子から立ち上がり、セシリアの隣に腰を下ろし彼女からコーヒーのカップを受け取った。
セシリアは携帯端末を取り出し、携帯端末を軽く操作をすると、携帯端末から機会的な女性の声が発され、セシリアの前に空間ウィンドウが展開された。
『
この新世紀を生きるものなら誰でも一度は聞いたことのあるRION《OS》のアシスト音声だ。トロンコアにも組み込まれたRION《OS》にはアクセスレベルが存在する。
生活用品や携帯端末などに許可されたアクセスレベルは基本的にレベル一だ。それ以上のレベルのアクセス権限は基本的にトロンコアしか保有しておらず、アクセスレベルの強さによってトロンコアの性能も変化する。
ちなみにセシリアが持っている《
レベル四は制限武装と呼ばれ、許可された地域でしか使用はできない。代わりにレベル四のトロンコアは固有能力を使用できる。
悠里を追い詰めた多方面攻撃はこの固有能力によるものだ。
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