第7話 恥ずかしがり屋

 セシリアについて行くと1―Aと書かれた教室にたどり着いた。


「ここが貴方の所属する予定の教室です」


セシリアが教室を指差したので悠里は軽く教室を覗くと、そこには知っている人影があった。


「あの……あの桃色の髪の毛の人って……」

「ええ、つい先程貴方を本気で殺そうとしていた張本人のリリスです。ごめんなさい。ここしか教室に空きがなかったんです」


「そうなんだ……なら仕方がないね。あれ? リリスさんの二個隣りの席空いてるけど、あれが俺の机って訳じゃ無いよね?」

「はい。違いますね。あの机の主は頭がいいので授業に参加しないんですよ。気にしないであげてください。さて、そろそろ貴方の部屋に向かいましょう」

「分かった」


 と、悠里がくるりと教室に背後を向けた直後、風が吹き教室の扉が揺れた。

 それの音につられたリリスは扉の方を見て、その視界に悠里を入れた。

 直後、教室から激しい爆発音がして、爆風で吹き飛んだ扉が悠里に目掛けて飛んできた。


「おっと。危ないな」


 辛うじて扉を回避した悠里は数歩後退すると教室から出てくる人物を注意深く観察した。


「大丈夫ですか? 悠里」

「うん。セシリアこそ大丈夫?」

「はい。ピンピンしていますよ……あっ。リリスが出てきましたね」


 セシリアに声を掛けられよそ見をしていた悠里は教室に視線を戻すと憤怒の表情をしたリリスが肩を怒らせ教室から出てきた。

 リリスの背後に見える教室では生徒が普通に授業を受け続けている。流石学園都市の生徒と言った所だろう。かなり慣れているらしい。


「どうしてお前がここにいる。それにセシリアも一緒に! お前も敵対するのか。……いいだろう。二人纏めて消し炭にしてやる」

「彼はこの学園の生徒です。決闘デュエルですら無い状況でこれ以上暴れるならあなたを処罰しないといけなくなりますよ。リリス」


 と、セシリアが悠里を庇うように前に出てそう言った。


「生徒⁉ そいつをこの学校に引き入れたのか。この女狐!」

「なんと言われようと私はこの学校の為に行動しただけです」

「くっ……ならば決闘だ! おい! お前名前は?」


 悠里は突然指を指され少し体を跳ねさせた。


「え、えっと……天久悠里。だけど」

「ふふふ。そうかでは天久悠里! お前に決闘デュエルを申し込む! 負ければ即退学これでどうだ」


 リリスはいい作戦を思いついたと言わんばかりに不敵に笑う。

 しかしそんなリリスに向かってセシリアが声を掛けた。


「それはいけませんね。そもそも我が校の決闘デュエル制度にはそう言ったルールは存在しません。それに彼はまだ契約書にサインをしていないので正確な意味ではまだ我が校の生徒ですらありません。どうしても戦いたいのであれば明日以降にお願いします」

「くっ……。天久悠里。覚悟してろ、明日こそお前を燃やし尽くすからな」


そう言ってリリスは教室に戻っていった。

行動のわりに意外と話が分かる人らしい。


「普段からあんな感じなの?」

「いえいえ、普段はもう少し大人しいですよ。ただ、貴方に裸を見られたので何らかの決着を付けないと満足しないのでしょうね。かなり恥ずかしがり屋なんですよ」


「そっか。ともかく明日は大変な一日になりそうだし、早めに休むとするよ」

「それがいいでしょうね。ではこのまま真っ直ぐ寮に向かいましょう」

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