夢を持ち込む花言葉

幻中六花

第1話 黄色とオレンジ色のガーベラ

 中学1年生の横田未来みらいには、大好きな祖父母がいた。

 父方の祖父母で、未来が生まれた時から可愛い可愛いと笑顔ばかり見せてきた祖父母。


 小さい頃からいろいろな物を買ってもらった。

 ランドセルや学習机もそうだ。学習机は今でも大切に使っている。


 小学生の時、母の好美よしみに叱られて落書きした跡も、薄く残っている学習机。今は高校受験に向けてもうひと頑張りするぞ! という輝きを放つ。



 ──1ヶ月ほど前のこと。


 テスト勉強をしていた未来の部屋に父、明典あきのりが入って来た。


「おばあちゃんが入院したんだって。次の日曜日、みんなでお見舞いに行こう」

「どうして? この間まで元気だったじゃん」

 未来は、2週間ほど前に祖父母に会っていて、その時には元気そうにしていた祖母のウメが入院したということが信じられなかった。


「まだ検査の結果が出てないからわからないけど、もしかしたら癌かもしれないって……」


 明典もまた、信じられないという顔を隠し切れておらず、動揺がそのまま未来に伝わった。


「……まだわかんないんでしょ?」

「ああ。まだわかんない」

「じゃあ、結果が出るまでわからないじゃない」


 未来は明典を励ますように、まだ決まったわけじゃないと言い、日曜日のお見舞いを承諾した。


 ──日曜日。


 病室のウメは思ったよりも元気そうだったが、普段の生活で使っていた筋肉をまったく使わなくなったことで少し痩せ、小さくなっていたように思った。

 

 ──シワがまた、深くなった。


「おばあちゃん! 大丈夫? お見舞い遅くなってごめんね!」

 未来は黄色とオレンジ色のガーベラのフラワーアレンジメントを窓際に飾って言った。


「まぁ! 綺麗なガーベラねぇ! ばーちゃんの好きなオレンジ色も入ってる」

 ウメはとても嬉しそうにそのガーベラを眺め、

「ちょっと貸してみて」

と自分の手元に持ってくるように促した。

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