第112話 面倒な相手
「ビビビビババババババァ!!!!」
俺たちを認識してエリアボスが周囲の空気を震わせ威嚇の声を上げる。
本来なら今までと違うタイプのエリアボスに警戒を強めないといけないのだが、俺の中ではそれ以上に戸惑いが大きかった。
おかしいな。
最近倒されたばかりのボスだから情報が少ないのは仕方ないが、最初から空に浮いているのは聞いていないんだが。
電気属性の精霊? だから直接攻撃はあまり有効打にならず、逆に麻痺状態にされることもあるらしいというのはイケシルバーから買った情報にはあった。
飛んでいるのは俺が聞き逃した可能性もあるが、これだと飛んでいる位置からしてまともに攻撃ができるのが遠距離攻撃を持っている奴だけになってしまう。
これでは明らかにクリアできるプレイヤーのプレイスタイルに偏りが出てしまうような相手なんだが、これは何かしら近接職でも倒せるようなギミックでもあるのだろうか。
一応1つ前のファイアガルーダも空を飛んでいたが、かなり低空だったし、普通に攻撃が当たる範囲にしか飛ぶことはなかった。いやまあ、シュラがほぼ瞬殺したからそれくらいしか行動できなかったのもあるんだが。
イケシルバーの話では、このエレクトロンというエリアボスは電撃を主体としてた攻撃をしてくる相手だ。よくある雷などを操るほどの強さはないようだが、直接触れれば結構強力な麻痺状態となってしまいそこを叩かれて戦闘不能に追い込まれてしまうことが多いと聞いた。
このエリアボスとプレイヤーが最初に戦ってから討伐まで多少時間がかかったのは、この状態異常を受けずに討伐する方法を練っていたからだそうだ。
直接攻撃ができない、地味に魔法の耐性も高くダメージソースを確保するのが実に大変だっとイケシルバーが漏らしていた。
最終的に弱点をついてゴリ押ししたらしいが、そのせいでその作戦に参加できなかった近接職の一部がまだ第7エリアに行けていないらしい。
雷属性の弱点は水属性。同時に得意属性も水属性とかなり変わった属性のようだ。
だからシュラによるゴリ押しでも行けなくはないと思うのだが、イケシルバーからこれについての注意点を聞いている。
どうやらこのボス最初の水属性攻撃は普通にくらうらしいんだが、それから一定時間水属性に対してオートカウンター攻撃があるようだ。知らずに攻撃していたらシュラが死にかねないので事前に知れてよかった。それに知っていれば対処は可能だ。
ボスがずっとこちらの様子を伺ってくることはない。動かないこちらに痺れを切らせたのか、こちらに向かってエレクトロンが近づいてきている。
移動速度はかなり遅いが、直接攻撃が難しい以上こいつにとって移動が遅くても問題はないのだろう。
しかし、それはこちらからすれば好都合でしかない。
攻略法についてはイケシルバーに聞いているんだ。それを俺たちにあてはめて対処すれば討伐はそれほど難しくない。
「シュラは1度だけ水属性攻撃で狙撃。絶対に2発目はするなよ!」
「はいです」
俺の指示に従ってシュラは腕を大砲のような形にして、それをボスに向ける。
「それでぷらてあと朱鞠はボスが落ちてきたら協力技を使って相手を固定。それが済んだら俺とキャラメルとやちゃるで遠距離攻撃だ」
俺たちの中で遠距離攻撃を使えるのは4人。ただシュラは水属性攻撃しか持ち合わせていないので今回はボスが動き出した時に攻撃するに留める。
ぷらてあと朱鞠は指示を出した通り協力技で相手を拘束。燃費を考えてもう使うこともないと思っていたが、下手に動かれても困るからな。
それと、このボスが動ける時に拘束してしまうと蔓や糸を通じて電撃を喰らってしまうのだが、怯んでいる時であれば問題ないらしいので大丈夫なはず。それに拘束さえしてしまえば2匹とも拘束に使った蔓や糸を自分から切り離すので動き始めたら感電、ということもないだろう。
「ですー!」
「ビビババァッ!!??」
ノロノロ近づいてきていたボスにシュラの攻撃が当たり、地面に落下する。
それを見てぷらてあと朱鞠がすぐにボスの近くまで行き、協力技でボスを地面に縫い付けていった。
そうして、地面に縫い付けられてもがいているボスに向かって俺とキャラメルたちが一斉に遠距離攻撃である魔法攻撃を放ち、それを何度か繰り返すことで、あぶなげなく第6エリアのボスを撃破することができた。
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