第99話 おおぅ……
何故魔女帽子?
やや強引に差し出されたので受け取ったが、どうしてこれを俺に渡すのかが良くわからない。まあ、お近づきの印として差し上げると言っているのだから、言葉通りにくれるという事だろう。とりあえず性能を見てみるか。
見た目重視の装備って、FSOではあまり性能が良いって感じではないんだよな。だからあまり期待は出来……めっちゃ性能良くね? え? 今装備しているのがトップ層の装備より1段、物によっては2段くらい落ちる感じなんだが、それよりも全然上だ。下手するとトップ層の装備よりも上なんじゃないか?
ただなぁ、FSOでは女アバターにしているけど別に女装好きではないし、コスプレ好きでもない。これは身バレ防止のためにTSしているだけで、そもそも美少女プレイが好きって訳ではないんだよな。まあ美少女が嫌いって訳でもないが、自分がそうなりたいという願望はない。
「あの、出来れば、装備していただきたいのですが」
渡された装備を見て俺の反応があまり良くないのに気付いたのかメイドがそう声を掛けて来た。
「あー、何て言うか。俺、あまりコスプレとか好きな訳ではないんだよ」
「え? 嘘ですよね?」
「嘘ではないんだが」
「嘘です。そんな綺麗可愛いアバターを作っておいて、コスプレ嫌いなんてありえません」
そもそも、好き嫌い以前に生まれてこの方コスプレなんてものはやったことはない。まあ、たしかにこういったアバターでプレイするのはコスプレみたいな物なのかもしれないけど、少なくとも現実でそういったことをしたことはない。学校の出し物も含めてだ。
それにコスプレが好きだったら、自由にPM装備が作れるFSO内で課金装備だけでプレイはしていないだろう。
「別にロールプレイをしている訳でもないし、あくまでこれはノリと偶然の産物」
「いやいやいやいやいやいやいやいや。そんなものでそのアバターが出来る訳ないじゃないですか!」
本当なんだがなぁ。つーか、この見た目になった最大の要因って種族がドラゴンレイスになったからなんだよな。だから、もう一度0から同じようにアバターを作れって言われたところで不可能だし。
はぁ。だぶんこいつ、何を言っても意見を変えるような人じゃないよな。これ以上言っても平行線な気がする。さっさと話しを打ち切ってここから出よう。
「えーと、メイド…さん?」
「メイド、と呼び捨てでお願いします」
「何故?」
そういえばさっきも呼び捨てにしろとか言っていたが呼び捨てを強要する理由がわからん。態度からして別に親しくなったから呼び捨てという感じでもない。そもそも初対面なうえに親しい訳でもないが。
「呼び捨てしてもらうためにこのネームにしたんです!」
「はい?」
ちょっと理解できないんだが? どうして、呼び捨てにしてもらう=メイド、になるんだよ。
「メイドメイドって呼ばれると、私自身が他の方よりも格下扱いされているみたいで、とても……あぁ、いい!」
うわぁ。ドMかよ。しかも一人で完結するタイプじゃなくて周囲も巻き込むタイプか。
ゴスロリとは言え、見た目が可憐な少女のアバター。それが何を思い出しているのかはわからないが、いきなり恍惚な表情をし出せばいくら可愛かろうとさすがに引く。
……正直関わりたくないタイプなんだが。この手のタイプってとにかくマイペースなやつが多くて人の話を聞かないことが多々あるからあまり得意じゃない。まあ、全く話を聞かないタイプであればイケシルバーがこの場に連れて来るとは思えないから、ある程は話が通じるのだろうが。
「メイドよ。ミヨ殿がとても困っているではないか。初対面なんじゃから、もう少し自重したらどうじゃ」
「え? あ! 申し訳ございません」
初対面じゃなければ自重しなくてもいいのかイケシルバー。って、注意されて頬を薄ら赤くするとかマジかよ。
言葉自体は上っ面だけじゃなさそうだが、あの様子を見ると何ていうかなぁ。反省している感じはあまり感じないし、おそらく今後関わることがあっても改善はされなさそうだな。
―――――
初期案よりもだいぶマイルドになってしまったなぁ……
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