第2章 プレイヤーメイドダンジョン

前語り ミヨガダンジョン第10層

少し先の一場面 ミヨガダンジョン8~10層


 私はキュリア。今、第2エリアに在る有名ダンジョンの中に居るの。


 アバターは可愛い小柄な女の子だけど、中身おっさんのネカマプレイヤーだぞぉ♪ って、思考面でもこんな気持ち悪い話し方をしている訳ではないので、元に戻そう。



 今、俺たちパーティーが攻略しているこのダンジョンは他の所とは異なり、ゲートキーパーを倒した際に報酬として出て来る宝箱からほぼ確実に武具が出る。そのため、FSOのトッププレイヤーで知らない者はいないと断言できるほど知名度の高いダンジョンだ。


 基本的にダンジョンで武具を手に入れることは出来る。ただし、武具が出る宝箱はダンジョンボスやダンジョンマスターを倒した際に出て来る物だけだ。ゲートキーパーを倒した時に出て来る宝箱に入っている物は大抵、魔石や素材であって武具なんて出ない。


 だからこそ、このダンジョンは有名なのだ。まあ、なら人気があるのかと問われれば、答えに窮するけどな。


 時折、前線での攻略が滞るとトッププレイヤーたちが挙ってこのダンジョンの攻略に乗り出しているので、人気がないわけではないのだが、それ以外でこのダンジョンに訪れるプレイヤーは少ない。


 理由は単純にこのダンジョンを攻略できないからだ。


 1層目に出て来るモブモンスターですらレベルが40という、第2エリアの平均レベルを大幅に上回るどころか、前線付近のモブモンスター並みに強いなどというふざけたダンジョンなのだ。


 そして現在、このダンジョンで最も攻略が進んでいる階層は8。

 まあ、それは俺たちのパーティーがどうにか、第5層に居たミヨガの壁と言われるゲートキーパーを倒して、今いる階層が攻略最前線だ。


 そもそも、第2エリアにあるにも拘らず、最下層という訳でもない第5層のゲートキーパーのレベルが59というゲームバランスのおかしさだったが、その先である第6層のモブモンスターが平均50レベルという、最前線よりも少し上なのもこのダンジョンのおかしさに拍車をかけている。


 俺たちの平均レベルは50を超えているので倒せなくはないが、大いに苦戦しながらも先には進めている。



 そして第8層のゲートキーパーを倒したところで想定していなかった物が目の前に現れた。


「9層に転移するための陣が2つ出ているのだけどぉ、どっちに行くべきぃ~?」

「知るかよ、そんなん」

「ですよね~」


 想定していなかった状況にパーティーメンバーと相談するものの答えは出ない。どちらに行っても初見である以上、判断できるものではないので当然ではあるけどな。


「ここに来た目的自体は達成しているし、どっちに進んでもいいんじゃないかな」

「あーまあ、そうだな。武器も新調できたし、どっちでもいいんじゃねぇ?」

「リーダーに任せます」

「どっち行っても同じだろ」

「じゃあ、左の方に行こー!」


 出来れば相談して決めたかったが、他のメンバーに判断を委ねられてしまったので俺から近い方の転移陣を選んで、そこから次の階層に向かった。



 そして時間は掛かったが9層目を突破。

 途中、パーティーメンバーのタンクが倒れることも在ったが、すぐに回復職のメンバーがタンクを復活させ、何とか10層目に到達することが出来た。


 第6層からダンジョンの構造が洞窟型から森のフィールドタイプに変わり、第9層からは森であることは変わりなかったが、木々に蜘蛛の巣が張り巡らされているのが目に付くようになった。


「9層のゲートキーパーが蜘蛛で、10層のゲートキーパーもこの分だと蜘蛛っぽそうだな」

「キュリア、蜘蛛きらーい」

「おっさん黙って」

「私も蜘蛛、苦手です」


 パーティーメンバーはこの可愛い女の子の中身がおっさんであることを知っているので、可愛いポーズを取ってみても対応が雑だ。最初の頃は結構引っかかってくれたんだけどなぁ。

 あ、中身がおっさんだってバレた訳じゃない。俺自ら教えたのだからな。ここ、重要だぞ。まあ、そもそもFSOではフレンド登録すればリアルの性別がわかるから、変に隠すよりもさっさとバラした方が良いんだよな。



「おかしいですね。樹に付いている蜘蛛の糸が減っています」

「だなぁ」

「もしかして、10層のゲートキーパーは蜘蛛じゃないのか?」


 奥に進むにつれて変わっていく周囲の光景にパーティーメンバーが戸惑っている。俺も同じように戸惑いはあるもののそれは表に出さないように繕う。


「まー、どちらにしろ森には変わりないからねぇ。そこまで系統は変わらないと思うなー。って、あそこがゲートキーパーの戦闘エリアっぽいね~」


 パーティーメンバーの戸惑いと言うか不安のようなものを少しでも払おうと話しているところで、目の前に開けた場所が見えて来た。


 俺たちは足を止めることなくその場所に向かって進んで行く。そうして俺たちは第10層のゲートキーパーと対峙した。


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