第50話 インスタントダンジョン

 

『インスタントダンジョンを初めて発見しました』


 インスタントダンジョンねぇ。即席ってことだろうから、出来立ての可能性もある……のか? 今まで一切見なかったし、掲示板でも話題に上がっていなかったから、いつの間にかサイレントで追加されたのかもしれない。


 うーん、ああ。適性レベルの表記もあるのか。それで、このダンジョンの適正レベルは12と。既に苦戦することなくクリアできる新緑のダンジョンが15だから、余裕でクリアできる範囲だな。


 鑑定で出た限りシュラたちが死ぬことはなさそうなので、このままダンジョンアタックをすることにしよう。


「中に入るぞ」

「はいです」

「うん」


 相変わらず朱鞠は返事をしていないが、しっかりと後について来ているので問題ない。

 と言うか、何故か最近ぷらてあが朱鞠の上に乗って横着し始めているんだよな。戦いになれば降りているし朱鞠も気にしている様子がないから何を言うつもりはないが、重くないのだろうか。ぷらてあがヒューマプレンテの時に一度抱っこしたことがあるけど、あの時でもまあまあ重かったんだが。



 ダンジョンの中は洞窟状になっていた。見た目的には第1エリアに在ったゴブリンダンジョンと同じ感じだけど、敵も同じでゴブリンとかはないよな? さすがに飽きている相手と戦うのは怠いんだが。


 暫くダンジョンの中を進む。敵が一切出て来ていないのだけど、どういうことなのか。このままゲートキーパー一直線なのか、それとも一階層しかない上にダンジョンボスしかいないというオチ?

 いやでも、今まで進んで来た距離的にモブ敵が居ないのも変だよな。


 そんなことを考えながら進んでいると、ようやく少し先にやや開けた場所が見えた。

 これまでのパターンからしてモンハウかゲートキーパーあたりだと思うがどうだろう。


 ……あー、これはモンハウだな。でも先に続く道が見えないから、モンハウそのものがゲートキーパーとかそんな感じか。


 開けた場所に居たのはウサギ。それも第1エリアのフィールドに居る雑魚敵だな。数自体は100以上居そうだが苦戦する程でもないし、そもそも攻撃を食らってもおそらくダメージは受けないくらいにステータスの差がある敵だ。


「大して強くない敵だから近い奴から倒していくように」

「です!」


 俺の指示を聞いてシュラたちはウサギたちに向かって飛び出して行った。朱鞠に至ってはAGIの高さ故か、俺の声を聞いた次の瞬間にはウサギに攻撃を与えていた。しかもスキルによる攻撃ではなくただの体当たりによる攻撃だ。その上、それで跳ね上げたウサギがポリゴンに変わっているところを見るに、やはりステータスの差はかなりあるようだ。


 シュラは何時ものように手から腕の先までを武器に変えてウサギを攻撃し倒している。ぷらてあは俺の隣に居るが、腕から伸ばした蔓を鞭のように振るいウサギを攻撃している。ぷらてあでも割と一撃で倒せているようなので、やっぱりウサギは雑魚のようだ。

 俺も光魔術で攻撃しているが、朱鞠とシュラの殲滅速度が尋常ではないのであまり数は倒せそうもない。


 そうして、1分も経たないうちにウサギの大半がポリゴンに変わり、1分を少し過ぎたころには全てのウサギが倒され消えていた。


「終わったです」

「シュ……」

「ちょっと…疲れました」


 ウサギを全滅させた後、離れていたシュラと朱鞠が戻ってきた。疲れる程の戦闘ではなかったと思うが、普段とは少し違う戦い方だったしぷらてあ的には疲れることだったのかもしれない。まあ、朱鞠が戻ってきた瞬間、速攻で上に乗っていたからちょっと疑問ではあるけど。


 ウサギを全滅させたことでこの場所の真ん中あたりに転移陣と、ゲートキーパーの討伐報酬である宝箱が出現した。

 そして、報酬である宝箱を開けてみると中にはウサギの毛皮×100だけが入っていた。


 あれ、おかしいな。いつもなら魔石が入っているはずなのに、ここは素材のみなのか? それとも、インスタントダンジョンはこれが普通というパターン?


 まあ、入っていなかったのだから、このダンジョンでは入っていない物と思っていた方が気は楽だろうな。


 そう判断して、俺たちは次の階層へ転移した。

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