第25話

葛飾署に数日ぶりに顔を出すと、後輩の大塚が近寄って来た。

「先輩、この数日どこに行ってたんですか?先輩がいないせいで、俺かなり大変だったんですけど。」


「すまん。この前、調べてもらった『連続公然わいせつ事件』の最初の加害者で自殺した人について調べてたんだよ。」


「で、なにか分かったんですか?」


「いや、確証を掴むまではまだ出来ていない。」


「そうなんですね。先輩が捜査している間でも、東京で毎日、公然わいせつで捕まっている人が出て来ましたよ。ネットでは、ちょっとしたお祭り騒ぎですよ。」


「またか。ネットではどうなっているんだ?」


「毎朝のように、どこかの公園で誰かが裸で寝ているっていう噂が広まってて、動画撮影者たちがどこかの公園にカメラを持って生中継してたり、たまたま寝ている姿を目撃した人が本人の許可もなく、裸で寝ている写真をネット上に公開してたりと、やりたい放題ですよ。」


「まぁ、ここまで毎日のように異常な事件が起こっていたら、ネタにされるのも仕方ないよな。」


「そのせいで、警察の上層部はピリピリしているようなんですよ。」


「でも、警察の見解としては犯人はいなくて、裸で寝ていた本人たちのせいだってことで書類送検しているんだろ?」


「これまではそうだったんですが、さすがにここまで連続で起こっていることに違和感を上層部も感じているようで、近々、合同捜査本部が立ち上げられるって噂ですよ。」


「分かった。ちなみに、今日の現場はどこだ?」


「今日は、我々の管轄で起きましたよ。駅前の交番で現在、寝ていた人を確保しているようです。」


「ありがとな。」

駅前交番に向かおうとする神宮寺の腕を大塚が掴んだ。


「ちょっと先輩、どこ行くつもりですか?」


「駅前交番だよ。」


「行く前に、溜まってる書類を先に片付けてからにしてくださいよ。」

大塚は神宮寺の机の上に積み上げられている書類を指差した。


「帰ってきたらやるから。」


「本当ですか?絶対ですよ。じゃなきゃ、俺がやらないといけなくなるんですからね。」


「あぁ、約束するよ。もし、捜査本部が立ち上がることが確定したら、連絡してくれ。」

神宮寺は駅前交番で寝ている加害者に話を聞きに向かった。

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一度灯った復讐心は死ぬまで消えない 乃木希生 @munetsu

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