第45話 山猫団が消える日①


 「分かれ道?」


 分断するのは得策ではないのだが、この場にいるのは誰一人とっても常識の枠外にいる人物達。

 人質がいるかもしれない状況で立ち止まる事の方が問題であるし、行き止まりだった場合などは猶更問題となる。


 「戦力は半減するけど分かれましょう。」

 

 右側にレティシア・ユーリ・ユキ・ラウネ・アルマと人形


 左側にユーフォリア・ノルン・エロ夫妻・連絡役にアルマの人形


 「その先が分かれ道があった場合はチーム毎の判断で。2人以下にならない事!」


 仮に分かれて進むにしてももう少し進んだ後で良かったかもしれない。

 

 



 「最初分かれ道があったからどうなるかと思ったけどその後は一本道だったね。」

 途中で小部屋はいくつか通ってきていた。

 その中には数人の山猫団の団員がいたけれど、ラウネがスプラッシュで溶かしてしまっていた。


 そのラウネは疲れたのか、レティシアの背中でおんぶされ夢の中へ旅に出ていた。

 口の端から垂れる涎はもう気にしないようにしていた。

 時折クリーンを掛けてなかったことにしている。


 この中に30人くらいがいる部屋がある事はレティシアの察知で理解している。

 実の所同じように、ユーフォリア達が向かった側にも同じような状態が続いている。

 左右対称とまでは言わないが、人数が固まっているのをそれぞれの道の先に確認出来たため、分かれるという選択をしていたのだ。


 「さて、ヤりますか。」

 「シア少し下品ですよ。」


 「じゃぁ開けますよ。」

 ユキがドアを開けると……


 「あ゛」

 中の男達の視線が入り口へ一点集中する。

 侵入者の存在など疑ってもいないのだから、仲間以外が来訪してくれば嫌でも視線が向くというものだ。


 「この部屋にはいない事を確認。一人を除き殲滅します。」

 アルテの殺戮人形が先陣を切る。


 悪党には問答は必要がない。

 人形サイズではあるが出刃包丁を両手に持った人形が我先にと飛び出した。

 手を振る度に山猫団の鮮血がほとばしる。


 「私も仕事します。臭いおっさん達を料理するのは気が引けますが。」

 戦闘用の包丁を、人形と同じように持ち突進していく。

 

 「微塵切りぃ、短冊切りィ、乱切りィ、拍子木切りぃっ!ヒャッハー。大根がいっぱいだぁっ」

 ある意味では大根のように太い肉の塊が存在している。ユキの目には汚い毛の生えた大根にしか映っていない。


 


 「ねぇ、あれ。トレントにあーれーされてた二人だよね。別人じゃない?」

 「それなんですけどね、シア。シアに拾われて修行したでしょ、装備が化け物でしょ、シアの加護の掛かった食べ物を食べたりしてるでしょ?一緒に風呂入って揉んだりしたでしょ?化け物みたいにレベルアップしてないわけないじゃない。」


 「美味しい食事に適度な運動とスキンシップこそがレベルアップの秘訣なんですよ。」



 「もしかして、うちの従業員達みんなこんな感じ?」

 「……」



 「そこは何か言ってよ。」

 レティシアは肩を掴んでゆっさゆっさ揺すろうとして……


 「あっ」

 「あんっ」


 前者はやっちまった的な意味でレティシアが。

 後者は揉まれた事による嬌声でユーリが挙げていた。


 両手を手ブラで胸を隠すように掴んだユーリの胸を……もうこの際だからにぎにぎしてしまおうと、もみもみと指の運動をしているレティシアだった。



 「なにをいちゃいちゃしてるんですかぁ。」 

 「そうですよぉ、私達だけのけ者にしてぇ。」


 血まみれの包丁を持って、迫って来るユキとアルテ人形に少しだけちびりそうなレティシアとユーリだった。


 


 3人だけ残して肉の細切れとなっている山猫団団員達。

 残された男達がこれで心が折れないはずがない。

 しかし自分達が行ってきた行為もこれに勝るとも劣らないものだとは考えた事もないだろう。


 「さて、この先の情報を正確に迅速に答えた1名のみ、生きる権利を残します。醜い争いをするなら情報はいりませんのでその時は全員あぼーんです。」

 一度レティシアのクリーンによって返り血等を綺麗にしたユキが尋問する。


 ヤンキー座りをして包丁を肩にかついでトントンしている姿は恐怖でしかないだろう。

 事実、誰も得をしないが、おっさんらはお漏らしをしている。


 「こ、この先は広間につながっ繋がっていて。50人ぐらいが運動出来るくらいの広さがあります。


 「じゃぁこっちの二人は要りませんね。輪切りィっ」


 人間を縦に輪切りにしていくユキ。せん切りか短冊切りの間違いではなかろうかと、後ろで見ているアルテはツッコミそうになった。



 アルテの人形が動いた。

 「生きる権利を残してくれるって……」


 「私はと言いましたね。他の方の事は別です。味噌汁の具にすらならない大根には相応しい最期でしょう。」

 最後に残った男も結局は黄泉の国の住人となった。



 「悪党とはいえ、少し残酷ではないかと思い始めた。」

 「捕縛して国や領に突き出しても、全員死刑になるでしょうから気に病む必要はありません。気分が優れないようなら私が色々慰めましょうか?」

 

 「いちゃいちゃ禁止ーーーー」×2

 ラウネはこのような状況でも夢の中にいた。







 一方その頃、ユーフォリア達は……


 レティシア達同様、30人くらいが集まる部屋でヒャッハーした後だった。


 「結局全員粛清しちゃったから何も聞けなかったね。」


 「申し訳ありません。つい張り切って尋問調教してしまいました。」

 エロフのミーシャが鞭で痛みを与えて恐怖を植え付けてから尋問しようとしたまでは良かった。

 しかし、鞭を喰らった山猫団団員達はその場で弾けてしまう。


 鞭打ちの刑が可愛く見えてしまう程の威力で、一度スイッチの入ったミーシャは誰も止める事はなかった。


 「これ、絶対にシアの影響だろうね。」


 


 その先にある空洞へ進み、奥へと向かう。


 全員が合流する時も近かった。

 

 「嫌な臭いがここまで漂ってくるわ。これだから人間の男ってのは……」

 ユーフォリアが独り言を漏らしていた。

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