第38話 人形師は細部まで拘る
ユーフォリアが連れてきた5人が加わり20人を超える大所帯となった。
流石に師匠である西方無敵は今街にはいない。
外壁を作り終わってまたどこかへ行ってしまった。
追加発注工事を依頼しようと思ったのに。
これは一度全員を整理して予定等を組み替える必要が出てくるかもしれない。
当面は天職によって店か家か製作かに分ける必要があるかも。
後は本人の希望も加味する必要はあるけれど。
オークとエロフは当面南西側の街道製作。
ついでに木材や植物の素材確保。
人間勢で店と家を分担して、製作したい人には任せようと思う。
最近人形の売れ行きが凄いとも聞いている。
今にも動き出しそうで良いとか。あと手触りが良いとか。
何に良いのかは聞けなかったレティシアではあるけれど。
余談ではあるが、あのエロフの一番小さい子は30歳だと言う。
人間でいうところの12歳くらいの見た目である。
そして彼女、ミーシャの天職は「調教師」だった。
あの夜レティシアが覗いていた時のプレイは、ある意味正解だっと言えよう。
新人達が増え、住居は隣に一棟建てるまでは二人一部屋になった。
新しい5人は2:2:1と振り分けてある。
学園寮が二人部屋だった事もあり、新居の方はそれを参考に作る事にした。
これにはエロフの一人が木材加工師、オークの一人が建築士だったためこの二人には新居製作を依頼した。
新しい5人の女性陣には店2・家2・新居製作手伝い1で割り振っている。
これは一人が鍛冶師の天職を得ているため、その派生スキルが建築に生かせると踏んだからである。
こうして新たな体勢としてスタートしたシアのアトリエは、さらなる盛況となる。
ポーション系とフィギュア系が相変わらず売れ行き好調である。
鍛冶師の天職を得ているエロフが暇を見て作成したナイフ、包丁が新たな売れ筋商品となりかけている。
包丁の柄の部分は同じエロフが伐採してきた木材を使っている。
一般家庭では、そんなに多くの食器類は持っていない。
料理人も料理する食材で包丁を変えていないのが殆ど。
用途別で分けるには、決して安い買い物ではない。
ここにきてシアのアトリエで販売する商品は、切れ味良く、他より安価である点からも売れる要素は高い。
貴族のように見栄を張る種族であれば、猶更だった。
ポーションと違い、刃物類は身分によって金額を変えていない。
そのため、品薄状態となるのは自明の理でもあった。
「ねぇ、そのフィギュアが意思を持って夜中に動いたりとかはしないの?」
レティシアが何気なく問いかける。
「今の私では自由意志で動く人形は無理ですね。ランクの高い魔物の核でもあれば出来そうですが。」
アルテはしれっと答えた。
それを聞いた周りの者は、それはフラグだからやめてと止めていた。
南西への街道作成は進められていく。
手入れのろくにされていない森を、森林伐採から行わなければならない。
伐採された箇所の土を整地しなければならない。
エロフとオークのコンビはその作業を人間がやるより効率的に行う事が出来る。
レティシアお手製各種ポーションによりドーピングされているので、通常のエロフやオークよりも性能は高いのだが。
人間だけの開拓よりは確実に早く進んでいたが、それでもエロフの里までは時間を要する。
その間にもアトリエの方は、店の方は慌ただしくも過ぎていく。
「ねぇアルテ。その人形はナニ?」
「お姉さま着せ替え人形ですわ。細部まで拘ってますの。」
「ラフィーさんにお願いして色々人形の衣服も作って貰いまして……」
「人形の衣服はラフィー製作なのね。」
「裁縫師ですからね、お姉さまのバフでパワーアップしたラフィーさんが製作する衣服も性能がすごいので。」
劣化防止、汚染防止、精神力回復等の効果が付与されており、半永久的に遊べるという。
「細部まで拘ってるって?」
アルテが人形の衣服を剥いでいく。レティシアは何故か羞恥で顔が赤く染まっていくのがわかった。
可愛いフリフリの衣服の下には、当然可愛い下着が着用されており。
「ねぇ、見覚えのあるデザインなんだけど。」
「だから細部まで拘ったと言ったじゃないですか。これはお姉さまの下着がモデルです。」
「ちなみに聞くけど……サンプルはどうやって?」
「メ……」
「あ、それだけでわかったわ。あとでシメる。」
アルテはその下着をはぁはぁしながら指をかけてゆっくりと人形本体から引き離していく。
「言いましたわ、細部まで拘ると。」
「私、一度見て脳裏に焼き付けましたので!」
過去に一緒に入浴した際にお互いの裸は見ている。
その時の事を指しているのだろう。
「もちろん成人にしか売りませんよ。限定50セットは即日完売でしたし、身内のみに製作した分も即完売でした。」
先日長蛇の列となり「最後尾はこちらではございません。」プラカードが久しぶりに仕事をしたのだが、それはレティシア着せ替え人形セットの販売だった。
レティシアがお店に出ていない時限定の発売であり、発売時期は不定期だ。
それなのに長蛇となり即完売。本人のみぞ知らないというものだった。
裏を返せば住民達からの人気が高いという証でもあるのだが、それはレティシア本人のものかアルテの人形そのものか。
「私を模した人形を販売する許可は渋々出しましたけど……流石にソコとアソコは却下します。」
「あなたも一度反省の意味を込めてメイと一緒に庭に一晩埋めちゃおうかしらね。」
「はぅっ。お、お姉さまからの折檻であれば喜んで!あ、でも今はユーリお姉さまのを製作ち……」
「赦します。今回の事はそれで手を打ちましょう。貴女はユーリ人形セットを作りなさい、それで今回の事だけは水に流します。」
レティシアは即答していた。
翌朝、ユグドラシルの苗木の傍に首まで埋まっている、頭にたんこぶの出来ているねこみみメイドのメイが発見された。
その隣には「私は女子の下着を盗んだ悪い子です。水はかけないでください。」というプラカードが立てかけれていた。
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