第18話 私がやりました。
「わぁ、王子に王女に宰相まで。シア……貴女って一体?」
先程別れたはずのユーフォリアが斜め後ろから小声で話しかけてくる。
「いや、なぜユーフィーがこの場に?控室でユーリ達と一緒にいたはずじゃ?」
レティシアは視線を動かさず、小声でヒソヒソと言葉を返す。
「私が凄いんじゃなくて、フラベル家に対してのものだろうから私はあまり関係ないわ。」
「シア……いや、レティシア席に着きなさい。話が始まらない。」
王家の者もいるためか、父レオナルドは領主モードとなっていた。
遅れて入室してきたレティシアとユーフォリア以外は座って既に紅茶を嗜んでいる。
「ユーフォリアさんもどうぞ。あの伝説のユーフォリア氏を追い出す事は出来ません。」
何の伝説かはともかく、ユーフォリアを座るよう促したのは第一王女であった。
ビアン王国第一王女、レーア・ビアン・ダーラ、17歳。誕生日が来ていないだけでレティシアとは同学年である。
紫陽花色……青紫色をした長い髪が特徴で結婚はおろか婚約者も決まっていない。
王の持ってくる相手はことごとく書類落ちしているとの事。
外見、家柄、人柄どれも父・王なりに娘のためを思って試行錯誤して用意しているのだが、一度でも会おうとすらしない。
それでも通常政略的なものも含め、王の決めた事であれば無理にでも押し通してしまうのだが、そこは強く出れない理由があった。
この国の王もまた、レオナルドのようにバカ親……娘ラブな親バカなのである。
無理矢理押し通そうとすると、もう二度と口効かないなんて言われた日にはひと月は王の業務に差し支えが出る。
具体的には王が一ヶ月は部屋に引き篭もってしまう。
似たような境遇であるレティシアとレーアは、学生時代に多少なりとも交友があった。
ビアン王国第一王子、カオス・ビアン・ダーラ、21歳。西側の隣国モホー王国の第一王女ジャミラと既に婚姻を結んでいる。
レーアと違い銀色に近い短い白髪。
ビアン王国宰相、ジョフク。第一王子カオスを溺愛という程敬愛している。
フォルセティ公爵、年齢不詳。既婚者で子供は男女共に一人ずつ。ビアン王国の南東部一体を治めている。超高速馬車を用いたため、10日も掛からずフラベル家に到着している。
錚々たる面々に加えフラベル家としてレオナルド、ライティース、イリスが所狭しとテーブルを囲んで鎮座していた。
「それでは失礼して……」
レティシアとユーフォリアは空席へと着席する。
「大体の話はレティシアも使者から聞いていると思う。此度の私の可愛くて可愛くて目に入れても痛くない程可愛くて仕方のない娘、レティシアに対するベルンスト家長兄であるユータ殿からの一方的な婚約破棄宣言について……」
「書状を王家、公爵家、ベルンスト家に送達し、本日こうしてお集まりいただいた。」
当のベルンスト家は一番近いのにまだ来てないがなと付け加えていた。
「そして街に入る少し前に、王家の方々が見えない壁によりそれ以上薦めなくて困っているベルンストの使者達を発見した。」
「あ、それ私がお店の初日開店前に、自分を中心に街全体に結界を張りましたから。そのせいかと思います。」
「どういう事だ?」
「一定の悪い思考を持つ者、共存できない魔物を弾く結界を張りました。その中で無意識でベルンスト家の者を入れていたようです。」
仮にも良い思い出のないあのダンジョンでの事が、それなりにしこりとなって残っており、出来ればベルンスト家の者とは二度と会いたくないなと思っていたのかなと。
それが結界作成時に作用してしまったという事だ。
それは例えユータ本人や、勝手に許嫁と決めたベルンスト家当主でなくとも、関係者であるというだけで作用するくらいには。
「
父レオナルドがレティシアにお願いをする。
脳筋王の父を以ってしてもあの結界を殴り壊す事は出来ないと見ていた。
「え?血祭始まるの?ブラッディフェスタ始まるの?」
ユーフォリアだけは外野のため一人、おかしな発想をしていた。
「ねぇ、ねぇ。」と隣の席に座るレティシアをつんつんと小突いていた。
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後書きです。
今更ですが国の名前が明らかになりました。
第一王女の名前で気付きましたでしょうか。
競走馬における三大始祖の名前の文字を組み替えております。
そしてビアンという名前に聞き覚えのあるスパロボ信者はおりますでしょうか。
それと隣国の名前……命名センスがない事は自覚しております。
第一王女について、青い紫陽花の花言葉の一つ「辛抱強い愛情」こそが彼女の肝です。
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